Catch me if you can.
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「……気が向いたら、でいいの?」

受け取ったカードキーを指先でグニグニと曲げながら視線を向けると、男は目を細めた。

「構わんよ」

でも君は来るだろう?とは口にしなかったものの、男の目は暗にそう示唆していて虎徹は肩を竦めた。
自信たっぷりな男は嫌いじゃない、こういう行為をする相手としては。
少なくとも彼は、それなりに容姿も整っているし、金も地位も名誉も、その傲慢な態度に見合うだけの物を持っているんだろう。

「……綺麗にしてった方がいい?」

やりたくて男を誘ったのは虎徹のほうだ、素直に折れることにした。
尋ねたのはシャワーを浴びた方がいいかとか、そういう意味ではない。後ろの処理を自分でした方がいいかという意味だ。
普通の男女のセックスとは違い、男同士の場合はアナルセックスになる。
無論、挿入無しでお互いを高め合うやり方もあるけれど、わざわざホテルまで来たのなら挿入有りのセックスがしたい。
もう虎徹の身体はその行為に慣れてしまっているから、その方が数段気持ちがいい。

「君の好きにしたらいい」

高速エレベーターは音もなく静かに、虎徹たちを地上60階のフロアへと運んだ。
廊下に出ると互いに黙ったまま歩き、別々の部屋のドアの前で立ち止まる。
カードキーを翳す時、虎徹は男の方を見たが男は虎徹を見ず、そのまま部屋の中へと入って行った。
取り残されてしまった虎徹は、仕方なく自分に充てられた部屋の扉を開いた。

「うお、すげえ……」

部屋自体は、そんなに広いわけでも豪華な調度品が並んでいるわけでもない、至って普通の部屋だった。
ビシッとしたスーツを着た、大企業のビジネスマンが利用しそうな部屋だ。
ただ、窓からの眺望が素晴らしかった。百万ドルの夜景、と称されるシュテルンビルトの夜景が虎徹の目の前に広がっていた。
導かれるように窓に向かって歩きながら、虎徹はネクタイを緩めようとして、止めた。
借り物のジャケットだけ脱ぎ、ハンガーへと掛ける。手荷物はベッドの上に置いた。
シャワーを浴びるのはやめよう。もしも相手が気にしたなら、あっちの部屋で浴びればいい。
虎徹はバスルームへと向かった。案の定、ゆったりとした作りではあるがユニットバスだ。
シャワーが便座まで届くのを確認すると、虎徹は下半身だけ脱いで腕捲りをし便座にスタンバイした。後ろを、洗浄するのだ。
本当はゴム手袋なんかを使用した方がいいらしいけれど、さすがにそんな物まで持ち歩いてはいない。
あの男は用意しているかもしれないし、この行為が好きだという奴もいることはいるが、虎徹は初対面の相手にこんな行為をお願いするのは真っ平御免だった。
爪が伸びていないのを確認して、石鹸で丁寧に手を洗う。指先を何度か押し当てると虎徹のそこは開いて、指先を飲み込んだ。
ゆっくり前後させながら、強引にではなく指先を進めていくと腸液で徐々に指がスムーズに進むようになってくる。
奥まで指を収めると、中を探り指先を曲げた。



 
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