イサン・シーモアの憂鬱
1.2.3


「で、何か手立ては考えてるんですか?」

以前は硬くなる能力を発動され拒絶されてしまった。あれを使われてしまえばネイサンに勝ち目はない。
ネクスト能力を無効化する新薬なども開発されてはいるが、副作用は未知数だしヒーローはいつ出動要請が来るかわからない。
となると、アントニオにセックスを持ち掛けても拒絶されない状態を作り上げるしかない。
ストレートのアントニオに、男同士のセックスに興味を持たせることなど可能だろうか。
……ネイサンは可能だと考えていた。

「ねぇ、ハンサム。タイガーとのセックスはどう?」

思いがけない質問にバーナビーの顔は赤く染まった。

「な、なんですか、いきなり」
「大事なことなの。気持ちいい?」

バーナビーは虎徹とのセックスを思い浮かべた。
気持ちがいい、なんてものじゃない。
もう何日もしていないが、あれはヤバい。
大袈裟ではなく、脳みそがドロドロに溶けてしまいそうになる。
赤く染めた顔を伏せながら、バーナビーは律儀に答えた。

「……気持ちいいですよ、とても」
「はぁーっ、やってらんない」
「ちょっと!貴方が答えろと言うから答えたんじゃないですかっ!」

ダンッ!とテーブルを叩き腰を浮かせかけたバーナビーを宥め、ネイサンは会話を続ける。

「ロック・バイソンに、さりげなくその話し聞かせてやってくれない?」
「えっ……」
「二人が付き合ってることは知ってるのよね?」
「はい、虎徹さんが話したと言ってました。僕も虎徹さんをよろしく頼む、なんて言われましたし」
「じゃあ話は早いわ。タイガーの話し聞かせて下さい、なんて飲みに誘って、ついでにそうゆう話も織り交ぜてよ」

バーナビーは頭の回転が速い男だった。ネイサンの意図に薄々気付き始めた。

「……つまり、ロック・バイソンさんに男同士のセックスが気持ちいいということを話せばいいんですね?」

ネイサンは満足そうに微笑んだ。

「そう。いきなり男同士には抵抗あるだろうから、まずはお尻の穴が気持ちいいってことに興味を持ってくれたらいいわ」
「それで……?」
「そうね、それで風俗にでも行くように仕向けて、まずは女の子にお尻の穴を開発してもらったらいいんじゃないかしら」
「……それで、本物が欲しくなって貴方に関心を持つと?」
「さぁ、そううまく行くかはわからないけど、いきなり私が押し倒すより確率は上がると思うわ」

はたして、そんなにうまくことが運ぶのだろうか?
第一、今日だっておじさんと過ごせる貴重な時間を割いているのだ。
会話が弾みそうにもないロック・バイソンを飲みに誘い時間を浪費するなど、あまり気が進まない。
バーナビーが渋っていると、そんなことはお見通しのネイサンが切り出した。

「あんたにだって、メリットはあると思うわよ。ロック・バイソンはタイガーの親友だもの。タイガーの昔の話やなんか聞くチャンスじゃない」

それを聞いた途端、バーナビーの目の色が変わった。

「わかりました、やってみます」

こうして二人の作戦会議は終了した。
計画通りに事態が進むかはわからない。だがまずは第一歩。
憂鬱な日々に別れを告げて、今日からは獲物が罠に掛かるのをじっくりと待つ忍耐の日々が始まる。
時間はかかるかもしれない、それでもネイサンの心は晴れやかだった。





Fin.




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