MISS BUNNY
「もうっ!……ほんと、嫌ですってば!」
バーナビーの顔が面白いくらいに真っ赤に染まる。
興奮したバーナビーに頭を二、三発殴られたが、それ程強い力ではなかったので大して痛くはなかった。
暴れるバーナビーの腕を掴み、椅子へと押さえ付ける。
男同士のいつもとは違い、容易に組み伏せることができた。
「痛いなァ、バニーちゃん」
押さえ付けたまま見下ろすと、碧の瞳にキッと睨まれたが、虎徹はヘラリと笑ってみせる。
そのまま顔を寄せていき、バーナビーの肩へと顔を埋めた。
「俺もシャワー浴びてないけど、嫌?」
目の前に晒された虎徹の首筋に誘われるように、バーナビーは顔を寄せた。
鼻先を擦り付け、それだけでは足りずに舌を伸ばす。
「……嫌じゃ、ありません」
「だよなァ。バニーって、俺の匂い好きだもんな」
虎徹からの指摘に、バニーの舌が引っ込んだ。
「……そ、そんなこと」
歯切れ悪く否定するバーナビーに構わず、虎徹は言葉を続ける。
「俺の匂い、ムラムラする?」
バーナビーはついに折れて、虎徹の首筋に鼻先を押し付け、虎徹の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「……しますよ、いけませんか」
「いんや、嬉しい」
虎徹の顔が近付いてきて、バーナビーは瞼を閉じた。
柔らかい唇が、押し付けられては離れていく。
啄むような口づけに焦れたバーナビーは、自分から虎徹の口内へ舌を押し込んだ。
いつもより短く感じる舌がもどかしい。
もっと深く交わりたいのに足りないと、懸命に求めるうちにガチリと歯が当たった。
唇が切れたのだろうか、舐めると口の中に僅かに血の味が広がる。
「……激しいな、バニー」
「ふ、ァ…、虎徹さん……」
いつもより濃い、虎徹の体臭にあてられたのだろうか。
虎徹が身に纏っているコロンの香りは、今はほとんどしなかった。
でも、それだけではない。
バーナビーはまだ、椅子に押さえ付けられたままだった。
女の身体になってから、虎徹はとても優しかった。
多少の意地悪はされたが決して乱暴なことはせず、丁寧に扱ってくれた。
虎徹に大事にされるのはとても嬉しかったが、バーナビーはどこか物足りなさを感じていた。
だから今の、このシチュエーションはとても興奮する。
この欲求を口にしてしまってもいいんだろうか。
虎徹さんは引かないだろうか。
一瞬躊躇いが頭を過ぎったが、欲望の前に崩れ去った。
「縛ってくれませんか、虎徹さん」
「えっ……」
バーナビーの予想通り、虎徹はとても驚いた顔をした。
虎徹の表情にクスクスと笑いを零しながら、足りなかった言葉を補う。
「僕の手を、縛って下さい。少し強引にされたい気分なんです」
「ええっ……、けど……」
「そんな、壊れ物を扱うみたいにしなくたって、大丈夫ですから」
バーナビーは自由の効かない手の代わりに、膝で虎徹の股間を探り当ててキツめに押した。
虎徹の眉尻が情けなく下がる。
「うっ…、……ったく、知らねぇぞ?」
虎徹の指先が首元のネクタイへ掛かり緩めた。
ネクタイが引き抜かれ、その様子をバーナビーがじっと見ていると、虎徹は目尻を下げて笑った。
「んな、期待に満ちた目で見つめんなよ」
指摘されて僅かにバーナビーの目元が朱に染まった。
「そんな……」
「すっげえエロい顔してんぞ、バニー。ほら、手ぇ出して」
虎徹に言われるままに手を差し出すと、頭上で一まとめにしてネクタイで縛られた。
縛られたといっても腕は動かせるし、それ程きつくはないので本気になれば解けそうなくらいだ。
それでもバーナビーは満足した。
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