MISS BUNNY
虎兎/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14



「もうっ!……ほんと、嫌ですってば!」

バーナビーの顔が面白いくらいに真っ赤に染まる。
興奮したバーナビーに頭を二、三発殴られたが、それ程強い力ではなかったので大して痛くはなかった。
暴れるバーナビーの腕を掴み、椅子へと押さえ付ける。
男同士のいつもとは違い、容易に組み伏せることができた。

「痛いなァ、バニーちゃん」

押さえ付けたまま見下ろすと、碧の瞳にキッと睨まれたが、虎徹はヘラリと笑ってみせる。
そのまま顔を寄せていき、バーナビーの肩へと顔を埋めた。

「俺もシャワー浴びてないけど、嫌?」

目の前に晒された虎徹の首筋に誘われるように、バーナビーは顔を寄せた。
鼻先を擦り付け、それだけでは足りずに舌を伸ばす。

「……嫌じゃ、ありません」
「だよなァ。バニーって、俺の匂い好きだもんな」

虎徹からの指摘に、バニーの舌が引っ込んだ。

「……そ、そんなこと」

歯切れ悪く否定するバーナビーに構わず、虎徹は言葉を続ける。

「俺の匂い、ムラムラする?」

バーナビーはついに折れて、虎徹の首筋に鼻先を押し付け、虎徹の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

「……しますよ、いけませんか」
「いんや、嬉しい」

虎徹の顔が近付いてきて、バーナビーは瞼を閉じた。
柔らかい唇が、押し付けられては離れていく。
啄むような口づけに焦れたバーナビーは、自分から虎徹の口内へ舌を押し込んだ。
いつもより短く感じる舌がもどかしい。
もっと深く交わりたいのに足りないと、懸命に求めるうちにガチリと歯が当たった。
唇が切れたのだろうか、舐めると口の中に僅かに血の味が広がる。

「……激しいな、バニー」
「ふ、ァ…、虎徹さん……」

いつもより濃い、虎徹の体臭にあてられたのだろうか。
虎徹が身に纏っているコロンの香りは、今はほとんどしなかった。
でも、それだけではない。
バーナビーはまだ、椅子に押さえ付けられたままだった。

女の身体になってから、虎徹はとても優しかった。
多少の意地悪はされたが決して乱暴なことはせず、丁寧に扱ってくれた。
虎徹に大事にされるのはとても嬉しかったが、バーナビーはどこか物足りなさを感じていた。

だから今の、このシチュエーションはとても興奮する。
この欲求を口にしてしまってもいいんだろうか。
虎徹さんは引かないだろうか。
一瞬躊躇いが頭を過ぎったが、欲望の前に崩れ去った。

「縛ってくれませんか、虎徹さん」
「えっ……」

バーナビーの予想通り、虎徹はとても驚いた顔をした。
虎徹の表情にクスクスと笑いを零しながら、足りなかった言葉を補う。

「僕の手を、縛って下さい。少し強引にされたい気分なんです」
「ええっ……、けど……」
「そんな、壊れ物を扱うみたいにしなくたって、大丈夫ですから」

バーナビーは自由の効かない手の代わりに、膝で虎徹の股間を探り当ててキツめに押した。
虎徹の眉尻が情けなく下がる。

「うっ…、……ったく、知らねぇぞ?」

虎徹の指先が首元のネクタイへ掛かり緩めた。
ネクタイが引き抜かれ、その様子をバーナビーがじっと見ていると、虎徹は目尻を下げて笑った。

「んな、期待に満ちた目で見つめんなよ」

指摘されて僅かにバーナビーの目元が朱に染まった。

「そんな……」
「すっげえエロい顔してんぞ、バニー。ほら、手ぇ出して」

虎徹に言われるままに手を差し出すと、頭上で一まとめにしてネクタイで縛られた。
縛られたといっても腕は動かせるし、それ程きつくはないので本気になれば解けそうなくらいだ。
それでもバーナビーは満足した。



 
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