Rain stops and a rainbow comes out.
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いざ出掛ける支度をしようとして気が付いた。バーナビーの服は昨夜の雨で濡れてしまい、一応部屋干しはしておいたが着れる状態かどうか怪しい。
確認してみるとコートは大丈夫そうだったがスーツはよれよれで、とても着られる状態ではない。
結局、虎徹が朝食の買い出しついでにバーナビーのスーツをクリーニングに出してくることになった。

「すみません、虎徹さん」

申し訳なさそうに頭を垂れるバーナビーに、虎徹は肩を竦めて頭を撫でた。

「気にすんなって。ダーッ、て行ってパーッ、と帰ってくっから」

虎徹が出掛けてしまうと部屋には静寂が訪れた。
虎徹がバーナビーの部屋を訪れたことは何度かあったが、バーナビーが虎徹の部屋を訪れたことは一度もない。
部屋の前まで送ったことは何度かあるが、部屋に入れてもらったのは今回が初めてだった。
虎徹はあまり自分のテリトリーに人が入り込むのを好まないのだろう。自分は図々しく他人のテリトリーに入り込むくせに。
改めて部屋を眺めると、一人暮らしにしては広い部屋だと感じた。そしてすぐに思い当たった、ずっと一人で住んでいたわけではなく、かつては一緒に暮らす相手がいたのだ。
部屋の片隅には段ボールが積まれていたが、チェストの上に飾られた写真立てはそのままだった。
好奇心から近付くと、それは虎徹の家族写真だった。一緒に写っている黒髪の女性は亡くなった奥さんだろう。
……彼もまた、愛する人を失った人間なのだ。
虎徹に気を許すようになってから、バーナビーは虎徹から壁を感じることがあった。これ以上は踏み込めないと、そう感じさせる壁だ。
その理由がわかったような気がした。

「家族、か……」

写真立てから視線を外すとソファーへと腰を落ち着けた。
相変わらずしんと静まり返った部屋の中で、特にすることもなくぼんやりと思考を巡らせる。
バーナビーには家族がいない。両親はマーべリックに殺されたし、祖父母もいない。天涯孤独だった。
その淋しさを紛らわせるため、両親の敵であるウロボロスを追うことに必死になり生きてきた。両親の復讐、それだけが生きる目的だった。
ヒーローになったのも、ウロボロスへの復讐のためだ。ウロボロスに近付くためにヒーローの立場を利用しようとした。
そんなバーナビーの前に現れたのが虎徹だった。
虎徹はレジェンドに憧れてヒーローになったという。お気楽で、バーナビーとは全く違う種類の人間だと思っていた。
けれど、全く違うなんてことはない。
彼も、彼の闇を負っているのだ。




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