Rain stops and a rainbow comes out.
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翌朝、バーナビーが目覚めるとそこは自分の部屋ではなかった。
朝の明るさで目が開けず、目を細めて足元の重しに手を伸ばし、それが何であるか確認しようとした。
触れてみると温かい。
それは、人の頭部だった。

「……虎徹さん?」

バーナビーは虎徹の部屋のソファーの上に横たわっていた。
昨夜、チャーハンを食べながら眠ってしまったバーナビーは、そのままソファーで夜を明かしたようだ。
身体には虎徹が掛けてくれたのだろう、毛布が掛けられていたが、何故か虎徹は床に座り、バーナビーの足元を枕にして眠っている。

「虎徹さん、そんなところで寝てると風邪引きますよ」
「んァ……」

肩を揺すると返事はしたが、バーナビーは思わず顔をしかめた。

「酒臭い……」

明るさにだいぶ慣れてきて目を開けば、視力が悪く覚束ない視界の中、机や床に置かれた酒瓶とグラスが目に付く。
バーナビーが寝てしまった後で、虎徹も酔っ払い眠ってしまったのだろう。

「……ほんと、しょうがない人ですね」

そう口にしたバーナビーの口元は、言葉とは裏腹に微笑んでいた。

虎徹さんと出会ってから、一年と数ヶ月になる。
彼のようなタイプの人間とは今まで出会ったことがなくて、最初はお節介で面倒な人だと思っていた。
それが行動を共にしていくうちに信頼を寄せる存在となり、自分で思っている以上に依存していたようだ。
あの後、虎徹さんがいなくても、一人でも大丈夫だと思っていた。
けれど実際は……。

「うーん……」

足元から唸り声が聞こえ、バーナビーは再び虎徹へと視線を向けた。
しかし、どうやら寝言だったらしく虎徹の瞳はまだ閉ざされている。
昨夜は久々にぐっすりと眠れたのだが、そういえば珍しい夢を見た。誰かにキスされたのだ。
相手の顔は見えなかったけれど、唇の感触が柔らかかったのを覚えている。
それから、よく知っている匂いがした。そう、虎徹さんの匂いだ。
どうしてそんな夢を見たのかはわからない。
けれど、虎徹さんの匂いがしたのは近くで眠っていたせいかもしれない。
当の虎徹は未だに起きる気配がない。
バーナビーは虎徹の肩をもう一度揺さ振った。

「虎徹さん、起きて下さい。……起きないとキスしますよ」



 
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