Rain stops and a rainbow comes out.
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ソファーで眠っているバーナビーに毛布を掛けると、虎徹はバスルームへと向かった。
歯ブラシを口にくわえ、湯を張ったバスタブにゆっくりと浸かる。

「ふぅー…」

熱めの湯に浸かると、大きく息を吐き出した。
シャコシャコと音を立てながら歯磨きをする虎徹の思考を占めるのは、バーナビーのことだ。

俺がヒーローを辞めた時、あいつもヒーローを辞めると言った。俺がいないなら意味がないと。その台詞は嬉しかった。
ヒーローを辞めて、やりたいことをやるというあいつに、俺は何をするのかとか具体的なことまでは聞かなかった。
俺は俺で、ヒーローの仕事を辞めることはやっぱり辛かったし、シュテルンビルトを離れて実家に戻ることや楓のこと、自分のことで手一杯だった。
今まで散々、手や口を出してきたバーナビーのことを、俺は放り出してしまった。
あの時のあいつには、何でも話したり相談したりできるような相手が必要だったろうに。
で、俺はあいつにそんな相手がいないことも知っていた……俺を除いては。
バーナビーは子供じゃない、俺がそんな心配までする必要はないのかもしれない。
けど、さっきの雨の中をずぶ濡れで歩いていたバーナビーの姿を思い浮かべると、どうにも自責の念に駆られる。

少々長めの入浴を済ませ、寝支度を整えるとロフトのベッドに向かおうとした。
だがその途中、ソファーのバーナビーの姿が視界に入った。
バーナビーはぐっすり眠っているようで、ぴくりとも動かない。
本当に眠っているだけなのかと少々心配になり近寄ってみると、当然のことだがきちんと呼吸をしていて虎徹はホッと胸を撫で下ろした。

「ったく、……心配かけやがって」

バーナビーの顔に掛かる邪魔そうな前髪を指先で除け、あどけなさの残る寝顔に虎徹は表情を緩ませた。
だがよく見れば頬の肉は削げ、目の下には深い隈ができている。
虎徹がシュテルンビルトを離れてから、バーナビーはどう過ごしていたのだろうか。
あの殺風景な部屋で、一人きりでいたんだろうか。
その姿はあまりに容易に想像できて、虎徹は無意識に溜息を吐いた。
先程まで訪れていた睡魔は何処かへ行ってしまい、このまま布団に入っても眠れそうにない。
焼酎のボトルとグラスを手にすると、ソファーの傍らの床に腰を落ち着けた。ソファーはバーナビーに占領されている。
テレビを付けたが、眠っているバーナビーを起こさないように音声は流さない。
画面に視線を向けながら、グラスに注いだストレートの焼酎をちびちびと舐めた。



 
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