Rain stops and a rainbow comes out.
濡れてしまった服は、当然まだ乾いてはいない。風呂上がりのバーナビーには虎徹の服を貸すことにした。
正直、ぜんっぜん似合っていない。
しかし当の本人は全く気にしていない様子だった。
バーナビーにソファへ座るように促して、虎徹もチャーハンを手にバーナビーの隣へと腰掛けた。
「ほら、ちゃんと食えよ」
自分の分のチャーハンをスプーンで口元に運びながら、ちらりとバーナビーに視線を向けるとバーナビーがスプーンを手にしたのが見えた。
「……いただきます」
きちんと挨拶をしてから、バーナビーはチャーハンに手を付けた。
こういうところが、育ちがいいなあと思う。
バーナビーがチャーハンを口に運び、口に含み、咀嚼する一連の動作を虎徹はこっそり見守っていた。
「どうだ、美味いだろ」
「……虎徹さんの、チャーハンの味です」
微妙にずれたバーナビーからの返答に、虎徹は怪訝そうな表情を作った。
「ンッ?そりゃあ、そうだろ。俺が作ったんだもん」
「そうではなくて……」
チャーハンを頬張ったまま喋る虎徹とは対照的に、バーナビーは一旦スプーンを置いた。
「あの後、自分でもチャーハンを作ってみたんですけど、何だか味が違って……」
「何だよ、それ。俺のチャーハン、うまくない?」
不機嫌そうに唇を尖らす虎徹に、バーナビーは無意識に穏やかな笑みを浮かべた。
虎徹と再会してから初めて見せた笑顔だ。
「いえ、……すごく、おいしいです」
つい、ドキリとしてしまった。
照れ隠しにバーナビーの髪をクシャクシャに撫でてやる。
「何だよー、もう。うまいならさっさと食えって。冷めちまうぞ」
ガツガツとチャーハンを掻き込むように食べ出した虎徹に笑みを向けると、バーナビーも自分のチャーハンを食べ始めた。
こんなに食事がおいしいと感じたのは、随分と久し振りのことだった。
チャーハンの味が違ったのは、作り方のせいだけでない。
隣で一緒に食事をする相手がいる、それだけでこんなにも食事はおいしくなるのだ。
だいぶ調子が戻ってきたバーナビーと当たり障りのない会話をしながら食事をした。
ほとんど虎徹が喋り、バーナビーは相槌を打っていたわけだが段々とバーナビーの発する言葉は不明瞭になってきていた。
「でさ、楓がさあ……って、バニー、聞いてる?」
虎徹はわざとバーナビーが嫌がる呼び方で呼んでみたが、バーナビーからの反応はもうなかった。
スプーンを握ったままソファにもたれ、すぅすぅと寝息を立てている。
「ったく……、食いながら寝ちまうって、子供かよ」
虎徹はバーナビーの手からそっとスプーンを抜き取り、毛布を取りに席を立った。
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