Rain stops and a rainbow comes out.
1.2.3.
4.5.6.7.8


「ほら、着いたぞ。えーっと、とりあえずタオル、タオルっと……」

足元が覚束ないバーナビーを抱えるようにして、虎徹はようやく自分の部屋へと辿り着いた。

ヒーローを引退し実家へ戻ることを決め、この部屋も引き払うつもりだったが、友恵と過ごした思い出が色濃く残るこの部屋を虎徹は未だ解約できないままでいた。
母親や村正など家族は、無理に引き払うことはないと言ってくれている。
しかし、人が住まない部屋は荒れる。
今日はたまたま、部屋の掃除でもしようと訪れたのだが、まさかバーナビーと出会うことになるとは予定外だった。

二人ともずぶ濡れで、酷い有様だった。
虎徹は二人分のタオルを手にすると自分も頭から被りながら、玄関に突っ立ったままのバーナビーへと歩み寄った。

「ハハッ、水も滴るいい男ってやつ?男前は得だなあ」

虎徹は努めて明るく振る舞ってみたが、バーナビーの反応はない。
本当にどうしてしまったんだろうか。
虎徹がシュテルンビルトを離れる前、最後に会った時にはいつも通りのバーナビーだったのに。

「ふ…あ、ハックションッ!」

盛大なくしゃみと共に身震いが走った。
“汚いですね、口を押さえて下さいよ、おじさん“
いつものバーナビーにならそんな皮肉を言われそうだが、相変わらず反応はないままだ。
バーナビーのことは心配だが、とにかくこのままでは二人とも風邪をひいてしまう。
虎徹は仕方なくバーナビーの頭にタオルを被せ、顔に張り付いている髪を指先で除け、ついでに水滴だらけの眼鏡も外してやった。
眼鏡を外してみるとバーナビーの長い睫毛も濡れていて、瞬きをすると睫毛の先に集まった雫が大きくなり転がっていく。
虎徹はつい、バーナビーの顔に見とれていた。
マーべリックの件の時も思ったのだ、身体中が痛くて痛くて意識が遠退きそうなそんな時に俺は、俺を心配して涙を流してくれるバニーの顔がとても綺麗だと。

「……やっぱ、睫毛なげぇな、バニーちゃん」

虎徹は見とれていたことをごまかすようにわざと大きな声を出し、ガシガシと乱暴にバーナビーの頭を拭いてやった。
その後で、自分の頭も適当に拭く。
部屋の中は外に比べれば暖かいが、濡れたままの服を身につけたままの身体は冷え、再びぞくりと悪寒が走った。
バーナビーも寒いに違いない。

「おい、バニー、服脱いじまえ」
「……はい」

自分も服を脱ぎ捨てながらバーナビーに声をかけると、のそりとした動きだがバーナビーが動き出したことにホッとする。
互いに服を脱いでしまうと虎徹はバーナビーへと視線を向けた。
裸など何度も目にしているはずだが、虎徹はバーナビーの裸体から目が離せなかった。
妙に艶っぽいのだ。

「虎徹さん……?」

バーナビーに名前を呼ばれ、虎徹はやっと我に返った。

「あー…、ほら、シャワー浴びてこいよ、先に」
「でも……」

渋るバーナビーの背を押すとひやりと冷たかった。

「うわっ、冷た……。いいから、先行ってこい」

それに、何だか痩せたようだ。身体が以前より骨張っているように見える。
そのことは口にせず、虎徹はバーナビーを浴室へと押し込めた。



 
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