MISS TIGER
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互いの唇がそっと触れ合う。
薄く唇を開き、虎徹の唇を唇で食むと心なしか何時もより柔らかいような気がして、バーナビーは舌の先で虎徹の下唇を辿った。

「ふ……」

虎徹の唇の隙間から吐息が漏れ、それをきっかけに舌を押し込める。
互いに口を開き、舌を絡めるうちにバーナビーは違和感を覚えキスを中断した。

「……バニー、どうした?」

不意に解放されて、虎徹は理由がわからず戸惑った瞳でバーナビーを見上げた。
当のバーナビーは、僅かに眉間に皺を寄せ何やら思案顔である。
もしかして、やっぱ女の身体の俺には欲情しない、とか?
虎徹がそんな考えを巡らせ不安に思っていると、何も言わずバーナビーが虎徹の顎を掴んできた。
バーナビーはしげしげと虎徹の顔の、特に口元に観察するような視線を送り、唇の間に親指を差し入れて口を開かせた。

「はにーちゃん…?」

どうにもバーナビーの行動が理解できないが、虎徹は口を開かせられたままバーナビーの名を呼んだ。

「男って、口がでかいんですね」
「ふぇ?」
「今まで慣れてしまって気付かなかったんですけど」

どうやら虎徹の考えは見当違いだったようだ。

「それに、髭がないからいつもと感じが違って」

バーナビーの手が離れ、虎徹は改めて自分の顎を撫でてみた。
トレードマークの髭が無くなった顎はつるりとした手触りで、確かにバーナビーが違和感を覚えるのも無理はない。

「……髭、あったほうがいい?」

顎を撫でながら困り顔で尋ねてくる虎徹が可愛くて、バーナビーからは笑みが零れた。

「いいえ、今は無くていいです」

虎徹の頬にキスを落としながら胸元の膨らみへと手を滑らせる。
いつもは鍛えられた筋肉が付き程よく硬い胸板が、今日はぐにゃりと柔らかい。
感触を楽しむようにシャツの上から乳房を揉みしだくと、虎徹が顔を横に背けているのに気付き、バーナビーは虎徹の顔を覗き込んだ。

「虎徹さん?」
「……なんだよ」

虎徹は頑なにバーナビーと視線を合わせようとしない。
加えて、ぶっきらぼうなその返事に、鈍いバーナビーも虎徹が照れているのだと察した。

「もしかして、恥ずかしいんですか?」
「……うるせー、……悪いかよ…」

口調はいつもの虎徹のままだが、その声は完全に女性の声だ。
バーナビーは改めて虎徹の全身を眺めた。
狭い肩幅に薄い肩、大きな胸に、服が邪魔で見えないが恐らく華奢な腰、それから……。
不意に視界が塞がれた。
視姦されることに耐え切れなくなった虎徹が、バーナビーの目を掌で覆い隠したのだ。

「んな、ジロジロ見んなって……」

もし今バーナビーが眼鏡をしたままであれば、確実に眼鏡は割れていただろう。
虎徹の行動はバーナビーにそれくらいの衝撃を与えた。
この可愛らしい生き物は、本当にあの虎徹さんなんだろうか。

二人がそういう関係になったのは、割と最近のことだ。何しろ知り合ってからも、まだ数ヶ月しか経っていない。
元々、虎徹はデリカシーに欠けていてムードなんて物も持ち合わせていないし、バーナビーも期待はしていない。
しかしそれでも、今思えば最初の頃はまだ良かった。
例えば、明るい照明の下でのセックスを嫌がったり、バーナビーの口での奉仕に躊躇いを覚える様が可愛かった。
快感に声を漏らしてしまうことを恥じらったり、抱き合った後バーナビーの腕の中で眠ることを照れ臭がったりする様も可愛くてたまらなかった。

それが今はどうだろう。

部屋が明るくても気にしない。
バーナビーが前戯している最中に、平気でテレビを見ながら笑う。
声を漏らすのは未だに気にしているようだが、セックスの後バーナビーが腕枕をしていても、一瞬で眠りに落ちる。
それだけではない。
バーナビーがいくら止めて欲しいと頼んでも、目の前で爪楊枝を使ったり、ゲップをしたり、放屁したり。とにかく、オッサンくさいのだ。
相手がおじさんだということは分かっている。
だけど、恋人同士になったばかりにしてはあまりにデリカシーに欠けているのではないだろうか。
虎徹は気を許しているからだと言うが、バーナビーはいくら何でも気を許し過ぎだと常々思っていた。



 
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