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水曜日は嫌いだ。



じゃんけんに負けてなってしまった図書委員。本なんて読まない私には最も遠い(物理的にも実際に遠い)図書室に行かなくてはいけないなんて。

毎週水曜日は私の図書当番。貸し出しの受付、図書カードの管理、本の整理、司書の先生がいないときは本の案内なんてやったりもする。


仕事を始めた当初、こんな校舎の端っこまでわざわざ来る奴なんているの?なんて思っていた。しかし、この学校の蔵書は都内有数で利用者はかなり多かった。


今日も憂鬱に図書委員として受付で仕事をしていた。いるはずの相方はバックレやがって今日は私一人。あの野郎、明日お昼奢らせてやるなんて思いながらも顔には出さず、借りにくる利用者に不快な思いをさせない程度の笑顔を貼り付けて作業した。

ああ、もうすぐ閉館時間か。人ももういないみたいだし、そろそろ戸締まりの準備しなきゃ。そう思い、席を立とうとした。

「あのー、すみません」

どこからか声がした。姿は見えない。

「あのー……」

『え、あ、うわっ!はい!って……黒子くんか貸し出し?』
「はい、お願いします」

(罪と罰…か。なんかこの前担任がオススメ図書でレビューを書いていた気がする。あんなレビューを見てる人、いるんだなあ。)

「二葉亭さんは水曜日担当なんですね」
『うん、黒子くんは木曜日だっけ?』
「はい」

黒子くんは一年のときに席が隣になったことがあり、顔見知りだった。クラス離れてから会うのは委員会で月に一度見かける程度。まともに話したのは久々だ。

『今日は部活ないの?』
「今日はたまたまなかったんです」
『そっか』
「今度からお昼に借りに来ますね」
『え?』
「放課後は部活で来れませんから」
ニコリと微笑み、黒子くんは本を持って図書室を後にする。



『わざわざ水曜日に……?』

(貴方に会いたい)
(少しでも意識してくれますように)


title:ポケットに拳銃さま


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