小説 | ナノ





純白のドレスを着た菜々子は本当に”美しい”。そう笑う彼の方が”美しい”。

「やっぱり、菜々子には白が良く似合う」
「ふふ、ありがとうー」

シンプルで無駄な装飾は一切ない、赤司くんと選んだお気に入りドレス。やっと着る日が訪れた。

化粧台の前に座る私を後ろから覗きこむ赤司くんの手が、肩にそっと添えられる。伝わる熱が優しくて温かくて、緊張が少し和らいだ。

「ねえ、赤司くん」
「菜々子も”赤司”だろう」
「あ、そっか。やっぱり慣れないなあ」

「大丈夫、すぐ慣れるさ」

そういって頬に軽くキスをする彼は、優しくて、かっこよくて、鏡に映る私と彼を見るたびに本当に隣にいていいのかな。不釣り合いではないかな、と考えてしまう。それを言うと彼はきっとそんなことない、と否定の言葉を言うのだろう。
ふわり、彼の香りが私の鼻孔を擽る。彼の唇が離れるとこんなに近くにいるのに、寂しいなんて思ってしまう私は、どこまでも彼に溺れてしまっているみたいだ。



「なんだ?名残惜しいのか?安心しろ、本番はちゃんと唇にするから」

「分かってるよ」

ただ、

「少しだけ、手を握ってもいいかな?」

「どうぞ、気がすむまで」


繋いだ私の左と彼の右手。共有する、体温。冷たかった私の指先は徐々に熱を取り戻してくる。

「手を繋ぐってやっぱり好きだな」
「学生の時からそうだな」
「うん、赤司くんの手、温かくて好き」

「手、だけ?」

「勿論、赤司くんの全部が好きだよ」


一瞬固まった赤司くんの口が開こうとした瞬間に部屋扉が開いた。

「新郎さん、先に準備お願いします」

はい、すぐ行きます。と返事をして彼は手をゆっくりと離した。もうちょっと手を繋いでいたかったけど、みんなを待たせるわけにはいかないからその言葉は呑み込んだ。

刹那、肩を後ろに引かれ、赤司くんの口が耳元についた。

「 」


じゃあ、と手を振り彼は部屋を後にした。
残された私には、彼の熱と、その言葉だけが駆け巡っていた。



旦那様、基い獣は言うのです。
「今夜は寝かせない」ってね。



企画英知さまに提出させて頂きました。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -