朝、目が覚めると右目がなんだかうまく開かない。左に比べて極端に視野が狭かった。それにずきずきする。
洗面所の鏡に映った私は、見事に物もらいを患っていた。
「どうしたんですか、右目」
登校するとすぐに黒子くんが私に話し掛けてきた。
「物もらいになっちゃいました」
右目の眼帯を指さして中二病じゃないよ、と言うと赤司くんじゃあるまいしと返された。
「でも困りましたね。距離感掴めないから危ないです」
「そうなんだよ。今朝も階段は手摺つたって来たんだ」
そう、片目だけだと本当に距離感が掴みづらい。いつもは簡単にできることが、少し難しくなる。
「転びそうになるし、本当怖いなー」
「今日の体育は見学した方が良さそうですね」
「そうだね」
「今日は、」
「ん?」
ふと、右手を握られた。温かい手は私より大きくて、それは男の人の手で。
すっと私の右手を上げて頬にすりよせる彼はとても満足そう。
「えっと……?」
「危ないですから」
少し上目遣いな彼は、優しくてどこかずるい。
「僕から離れないで下さいね」
title:少女Aの悩み事さま