私のお隣に住む幼馴染み、『黄瀬涼太』は知らない間に彼女が出来ていた。チャラい外見で嫌に香水臭く、ある意味全身鎧を纏ったその人を軽蔑の目で見た。そして、その人を連れている彼に対しても。

お隣近所と言えど、学校が違うし部活で朝の早い彼とは年に一、二回見かければいいとこだった。モデルとしても活動している彼は誌面で見るばかりで、本人を見たのは本当に久しぶりだった。

たまたま帰る時間が遅くなって、いつも乗っていた電車に間に合わずホームで待っていた。するとなんだか、先頭車両の方が騒がしい。野次馬、といえばそうだろう。芸能人がいるというから、ちょっと興味本意で覗いたらこれだ。確かに芸能人だし、キャーキャー騒がれる奴なんだけど、こいつか……と目をあわせるまえに萎えた。見なかったことにしよう。
くるっと足先の方向を変えて、別の車両に乗ろうとした。


「花子?」


声を掛けられ、結構肩を強く掴まれたから本気で殴ろうかと思った。ら、声をかけてきたのは黄瀬ではなく、クラスメイトのAくんだった。
タイミング悪いな君も。

「どうしたんだ?怖い顔して」

「いや、別になんでもない。ちょっとびっくりしちゃっただけだよ」

嘘はついていない。ふう、と胸を撫で下ろした。けど、ほんの少し残念と思ってしまった。



Aくんの話題に相槌を打っていて気づけなかった。隣車両に乗るときに、黄瀬が私を見ていたのを。



title:juneさま

*続きます。


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