一口サイズのチョコ(お徳用)を抱えて歩く花子ちゃん。三度の飯よりチョコが好きだという花子ちゃん。不思議なことにニキビはない。
「おーい、あんまり食べてると太るぞー」
「うるさい、和成!」
キッと声を張り上げてまたもぐもぐとチョコを食べはじめる。あーあー、見てるこっちが胸焼けする。
「そんなに好きかー?」
「うん、好き」
一瞬だけドキッとした。勿論、その「好き」が俺に対してではないことなんて分かってる。けれど普段花子ちゃんが俺には言わないことをさらりと言うから。くそう、チョコになんか嫉妬する。
その口を支配するのはいつだってチョコレート。たまには、俺だって、あんなことや、こんなこと……悶々とするなあ。
「俺とチョコレートどっちが「チョコ」……」
間髪入れずにチョコと断言。流石に悔しい。
「チョコは花子ちゃん気持ちよくさせてあげられないよ」
「……チョコレートはキスの四倍くらい興奮する作用があるらしい、
台詞を最後まで聞かずに、体が勝手に動いていた。気がつけば彼女の唇を舐めていた。ああ、甘い味がする。
「あんまりなこと言ってるお口はチョコレート食べちゃだーめッ!」
嫉妬ってすげーな。簡単に感情の枷を外してくれる。慌ててなーんてな、とお決まりの台詞で濁そうとしたのに。
「な、に、し、て」
ぱくぱくと口を動かす彼女はまるで金魚。顔も真っ赤だしね。手に持っていたチョコ(お徳用)を落としたのも気付いてすらいない。相当、パニクってるご様子。
ああ、満更でもない顔してる。
(チョコレートと俺)
(どっちが好きだなんて)
分かりきったこと聞かないで。
企画:頷く様に提出。
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