ゆっくり溶かしていけ心臓
※
これの続き
鬼ごっこで鬼に捕まった記憶がない。足がすばしっこかった訳ではない。上手いことタイミングを見計らって逃げ回っていた。昔から何か嫌なことがあればうまくかわして回避していた。
そう、全てにおいて。
しかし成績が悪いことはない。本当に逃げるのが上手い人は、目立つことはせず、誰からも目をつけられれないように忍のだ。
だからいざ、本当に逃げ場がなくなってしまった今のような現状での対処法とやらが一向に浮かばない。四面楚歌。
「逃げんなよ」
そう国見は笑っていう。
人通りの少ない階段の踊り場で、目的が読めない私は、動揺した。
「別にさ、とって食おうってんじゃないんだから」
「なにか、した?」
思い当たる節がない私は、素直に聞いてみた。このまま黙っていても埒が明かないと踏んだからだ。さもなくば、私のお昼ご飯の時間がなくなってしまう。食べることが遅い私には切実なのだ。
「なにもしてない、なにもしてないから」
「なにもしてないと、国見くんに追いかけるられるの。なにそれ怖いよ」
「怖くない、怖くない。ちょっと聞きたいだけ」
「なんでしょうか」
「今度の日曜の午後は、空いてますか? 」
聞かれて、点と点が線で繋がった。
「あ、試合、あるの?」
「左様」
「誠に奇遇ですな、空いてますよ」
なんて、ボケにノッてみると、嬉しそうな顔をした。
以前の体育の授業以来、国見くんの色々な表情をみるようになり、なんとなく感情が読み取れるようになっていた。
だからこそ、わずかに緩んだ頬を見逃さなかった。
「じゃあ、応援、よろしく」
「はーい、任しておきたまえよ」
彼は嬉しそうに階段を降りて行った。
私はその場に座り込み、顔の熱さを確認した。
無駄にイケメンな顔、近づけないでよ。勘違いするでしょーが。
彼の後姿を微かに睨んだ。
title:3秒後に死ぬ様
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