私の幼馴染は年齢より上に見られることが多い。それはきっと近くにいる人間が末っ子気質だったことと元からの世話焼き体質のせいだと思う。

同じ17年生きてきたのに、いやあ、やはり環境というやつは人をよくも悪くも左右させるんだなと納得してしまう。私は未だ子供じみてて、甘えたがりで、けど素直に甘えられない面倒な性格になっていた。察して欲しいなんて思ったりもするけれど、忙しい彼にそんなこと言えるはずもなかった。第一、私たちはただの幼馴染なのだから。


「あかしーーーエアサロンパスどこーー?? 」
「ああ、マネージャーが運んでましたよ。向こうです」

相も変わらず赤葦は木兎さんの相手をしてる。こうもずっといられると、こちらとしても実は二人ってみたいなあり得ない方向に思考が巡る。いや、すぐに我に帰るけれども。

私は遠くからマネージャー業をして、小さく溜息をつく。今に始まったことじゃない。

「樋口〜ドリンクちょーだい」
「あ、木葉さん! ちょっと待っててください!すぐ行きます!」
「焦らなくていいよー」

選手に呼ばれたならちんたら歩いてられない。ドリンクを持って木葉さんのところへ向かう。

「いやあ、樋口が作るドリンクは美味いねー」
「粉入れて混ぜるだけですよ」
「愛だよ、愛」
そう言って手を握ってくる木葉さん。
「うわあ、木葉さん寒いです」

ぶるぶるとわざと小刻みに震えると、木葉さんは「本気なのにー」だなんて笑いながら言う。全く、後輩をからかって遊んでるな、この人。

「木葉さん」
「おー、赤葦どうした?」

足音一つ立てずに現れるものだから、驚いてしまった。なんだか、すこしばかり焦っている表情に、見えなくもない、かな?

「赤葦どうしたの?木兎さんなら向こうだよ」
「なんで木兎さんなんですか」

じゃあなんだろう。ああ、もしかしてドリンクが欲しかったのだろうか。

「はい、ドリンク?」

首を傾げてドリンクを渡すも、違いますと断られた。すると赤葦は痺れを切らしたように、私と木葉さんの手を引き離した。

「な、ん、え?びっくりしたー??」

驚いている私と、さも当然のような、しかし呆れ顔の木葉さん。

「木葉さん、それは駄目です」

拗ねた子供のように言う赤葦。

「俺のなんで」



誰が?赤葦の?

「なんだ、お前ら付き合ってたんだ」
「え、いや、え?」

「はい、そうです。たった今から俺と樋口は付き合ってますので、金輪際樋口にはお手を触れないでください」

私の思考が追いつかない。
ねえ、木葉さん、笑を堪えてないで、この状況にどうか説明をしてください。どうした、赤葦。今君はかつてないほど顔が赤いし、きっと私の顔も赤い。

遠くで集合の声が掛かる。
ちょっと待って、あと数分待って。私の顔の火照りが収まるまで。


title:スプーンさま
砂糖を踏む
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