リア充がするというお家デートなるものを、私もしてみようと思う。


私、樋口一葉は16にして初めて彼氏が出来た。一つ上の赤葦京治さん。同じ高校の男子バレー部で副主将をしているという。どこで出会って今のお付き合いに至ったかはここでは割愛させてもらう。

とにかく、今私は、初彼氏である赤葦さんのお家の前でインターホンを押せずに棒立ちしている。

このインターホンのボタンを押したら赤葦さんは出てくるんだろうけど、押したらその先にある赤葦さんの最も神聖なプライベート空間に足を踏み入れることになる。緊張し過ぎて平常心で居られない。
来る前にシャワーを浴びて清めてきたのに、なんだか変に汗が出てくる。こんなとこに汗腺ってあったんだ。ダラダラと出てくる。
ああ、塩でも持ってきて清めればよかった。
なんてぶつくさ言っているうちに、うっかりインターホンのボタンを押してしまった。心の準備が、ああ……。

「一葉?」

出てきたのは赤葦さん。私は勢いで返事をしたら裏返ってしまった。恥ずかしくて既に帰りたい。
赤葦さんは今開けるといって、インターホンを切り、すぐに玄関のドアを開けてくれた。


直ぐに赤葦さんの部屋に迎え入れられられた。バレー関連のものと、学校関連のものと、それと、赤葦さんのベット。赤葦さんがいる為の部屋なんだなあ、なんて思う。ぼうっと立っていたら座ってと促された。

さあ、どこに座れば良いのですか。
座布団なのか、それともベッドに腰掛けるか。まあ、無難に座布団に座る。赤葦さんは飲み物をとってくるからと部屋を出て行く。
階段を降りていく足音が遠ざかるのを聞いて、私はベッドに倒れこんだ。ふかふかの布団からは赤葦さんの匂いがする。抱きしめられているみたいでドキドキする。ごろごろ遊んでいた私は、階段を上がってくる赤葦さんの足音に気づかなかった。

ガチャリと開いたドアから入ってきた赤葦さんと目が合う。あ、あ。
とにかく、なんと言い訳をしたらいいのかと頭をフル回転をするけれど、得策は思い浮かばない。どうしよう、赤葦さんになんて思われてしまうんだろう。

「あ、あの、あのね」

なんとか言葉を絞り出すも、声はどんどん小さくなる。
赤葦さんは持ってきた飲み物をを机に置いて溜息をついた。そっと近いてくる赤葦さんの表情は無表情で、何を考えているのか読み取れない。というか、私は彼の心情をまともに読み取れた試しはない。

彼の大きな手が、私の頬に触れてきた。触れたところは熱を帯びてそれは全身に広がる。きっと私の平熱は2度上昇した。

「一葉って大胆だよね」

悪い顔をした赤葦さん。あ、これはあかんやつですわ。

ギシリと音を立てたベッド。私はそっと押し倒される。違う、違うんだ。そういう展開は私にはあと多分半年、いや一年くらい早いよ、赤葦さん!


初めて赤葦さんの心が読めた。
これは、ヤる気だ。


title:塩さま
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