どう接したらいいのか距離感が掴めず、友達とも言い難かった。彼とのポジションに未だ悩んでいる。 そんな彼に好きだと言われ、戸惑いはしたものの別に嫌だなとも思わなかったので付き合ってみることにした。 それから半年、何も起きなかった。一緒に帰ることや出掛けることはあっても、手を繋いだりましてやキスやらそれ以上なんて未開の地である。まあ、徐々にいけばいいのかなって思っていたけど、最近の高校生(私もだけど)は色々と早いようで友人には遅いねなんて言われた。さいですか。 そんなこんなで今日は月曜日。部活三昧な彼の唯一のオフになる。いつも通り校門でまっていると、わりぃ遅くなったと走ってきてくれた。別に待ってはいないから大丈夫だよと笑うと彼も笑った。 一緒にいる時間は恋人になる前に比べたら断然増えて、好きなのかな?から好きだなあと思うくらいには変わってきた。時の流れなのか、いや、彼の魅力に引き込まれているんだなと実感する。 「寒いな」 もう仙台は雪が降り積もっていたので当然寒い。風なんてふかれたら尚更のこと。 そうだねと頷くと、そこで会話が途切れてしまった。いつもなら居心地の悪い沈黙ではないから気にしないのだけど、今日の彼はなんだかそわそわと落ち着かない。どうしたの、と覗き込むように言えば、なんでもないと返されてしまった。 そのまま信号待ちで立ち止まり、白に埋まりそうな赤い光をぼーっと眺めていた。 横断歩道を渡ってしばらく歩けばうちに着く。あとほんの五分だけの帰り道。 そこでふと思い出す友人の言葉。 半年で、何も起きないなんて遅い。もしかして、愛が冷めちゃったんじゃないの? その言葉はやけに鮮明で、気にしないつもりでいたけど、私も人並みに女の子なんだなって笑った。 今日ももうすぐ家に着く。きっとこの前の月曜日と変わらない。寒さに凍えた右手は、このままなのかなとも思う。 次の瞬間、ぐっと強い力で腕を引かれた。 「一葉」 彼が酷く慌てた顔でさらに腕に力を込めた。そしてたった今、信号は青に変わった。 「ごめん、ぼーっとしてました」 「まじでやめてくれ。心臓に悪い」 そういってごく自然に彼は私の手を握ってポケットにしまった。しかも恋人繋ぎというやつ。 「危ないから」 「うん」 お互い恥ずかしくて別の方向を見ていたけど、手だけはしっかりと握られていた。 家まで、残り五分。 もう少し、この温度のままで。 title:依存症さま ポケットには大きな幸せを |