私の母は所謂シングルマザーというやつで、よく一人公園で遊んでいた。それを気の毒に思ったのか、それとも単なる気まぐれだったのか分からないけれど、たまたまバレーの人数が足りないからと誘われたのが知り合ったきっかけだった。
私のご近所にいたもにちゃんは五つも離れていたのに、私の面倒をみてくれていた。それは中学を卒業し高校に入った今でもそれは続いている。部活で忙しく、しかも主将を務めているみたいだけど、それでも合間を縫っては私のところにきてくれる。あまりにも忙しそうで、体調を崩して欲しくないし、なにより私はもう中学に上がったので面倒をみなくても平気だよと言えば、俺が心配なんだよと言ってやっぱり面倒を見てくれた。

けれど、本当にそろそろもにちゃん離れをしよう。そう決意した高校生になった春。もにちゃんは社会人になった今でも私の面倒をみてくる。

「私、昼は学校、夕方はアルバイトだし、もにちゃん。私は大丈夫だよ」
「え!?アルバイト?アルバイトなんて、どこでやるのさ」
「えっとこの前出来たファミレスあるじゃない?そこでね」

「ダメだよ、まだ高校生なのに。飲食店なんてどんな奴が来るかわからないし、ましてや夕方から夜にかけてなんて帰りが心配だからダメ、絶対ダメ」
「お母さんは許してくれたし」
「俺は許さない」

真剣に怒ってるみたいだけど、ただの幼馴染だし、そんなこと言える立場じゃないと思うんだけど。全く、お兄さんは過保護だなあ。

「けど、自分の携帯代とお小遣いくらい」
「そんなの俺が出すからいいの」
「なんでよ、もにちゃん言っとくけどただの幼馴染で血の繋がりとか全然ない、言うなれば赤の他人だよ?」

そう言うともにちゃんは黙ってしまった。さすがに赤の他人は言い過ぎてしまっただろうか。居心地が悪くなって謝ろうとすると、もにちゃんが先に口を開いた。

「一葉ちゃん、今いくつだっけ」
「15だね」

するともにちゃんは小さく舌打ちした。なんでよ。私はまだピチピチの15歳だよ?花の高校生ですよ?

「誕生日まで言うか迷ったけど、赤の他人なんて俺は思ってないからね」

立っていたお兄さんは片膝を着いて私の左手をとりキスをした。

「もにちゃん?」
「俺と結婚して欲しい」

私の脳内には宇宙が広がり、機能が完全に停止した。あまりにも急であり、しかも過程を一つか二つは吹っ飛ばしている。

「もにちゃん、さすがに犯罪だよ」
「本気だよ」

そんな目で見られたら、本気って思っちゃう。私はまだ子供なのか、それとも。



title:ポケットに拳銃さま
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