たおやかに反転
任務を終えてアジトに戻ると、セトがソファーで死んだように眠っていた。今日でやっと五連勤のバイトを終えたようで、体力に自信のある彼もやはり疲れたようだった。
本当はセトを自室に連れていってベットで寝て貰いたいけれど、私一人で運ぶことは不可能だった。アジトには私とセト以外いないようで、セトの寝息しか聞こえない。
起こすのも可哀想なので、仕方なく私の部屋から薄手の毛布を持って来て、セトに掛けてあげた。セトはスヤスヤと寝息を立てて眠っている。
「疲れたよね」
彼の髪をそっと撫でる。びくりと動いたがそれは反射的に動いただけだった。良かった、起きたのかと思った。
じーっと彼の顔を覗いてみる。普段はしっかりして気を張ってるみたいだけど、寝ている彼は年齢より少し幼く見えた。
たまには甘えてもいいのに、強がっちゃってさ、ずるいよ。
私は無意識に、セトに吸い込まれるように頬にキスをした。
なに、やってんの!!自分!!!
あわわあわわと静かに慌てる。寝込み襲うなんて、本当どうかしてる。しかも、付き合ってるわけでもなんでもないセトに。どうしよう、寝てるよね、気づかれてないよよね。
兎に角、逃げよう!私は急いで、自室に戻った。
**
パタンと扉がしまり、リビングには俺一人になった。
丁度ソファーに横たわると、「ただいまー」と花子が帰ってきた。どうせなら驚かしてみようというちょっとした遊び心で狸寝入りをした。
するとなんとまあ、花子が頬にキスをした。
正直、予想外だった。
鏡がなくとも自分の顔が今どれだけ赤いか分かる。熱がそこに集中して、沸騰しそうだ。
(どうしよう)
(明日からまともにみれないっすよ)
title:錆さま
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