純白のプリメーラに沈没

「私ってなんでこんなに小さいんだろう」

ふと、隣を歩く彼女が言う。彼女の身長は148cm。確かに平均の女子に比べたら10cmも低い。意識しないと歩幅が開いてしまうので、常に気持ち遅く歩く。

「別にいいじゃん。かわいーし」

「よくなくない!」

ビシッと指をさしムスっとする。ちまちま動く彼女はまるでお人形さん。

「それっていいって言ってない?」

あ、と気付き赤くなる。ちょっとしたことでコロコロ変わる表情は見ていて飽きない。小さいから制服を着て歩いていなければ小学生に見られるのは、身長だけではなく幼さの残る言動にあると思う。

「小さいと不便だし」

「俺がいるから大丈夫だろ」

「ちがくて、」

「何が?」

「あのね、」

何かを言おうとして止めて、また何かを言おうとする。その動きが可愛くて、ぎゅっと抱き締めたくなる衝動を押さえる。

「たまには、私から……キス、したいなって……うわあっ!」

理性が見事に吹っ飛んだと同時に、抱き締めて俺の両腕に閉じ込めた。キスしたいなって、言ってくれた。いつもは俺からで、俺ばっかしたいのかなって思ってたからすげー嬉しくて。

「キス、してくれんの?」

「今は無理!……ここ、公共の場だもん!」

「俺ん家来る?」

「やだ。和成くん獣の目してる」

「このまま俺ん家な」

(やっぱなんでもない!)
(逃がさないぜ?)


title:夜に融け出すキリン町さま

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