ハローハロー、こちら青い星
※大学生パロ
「留学? 俺そんなこと一言も聞いてないぞ!!」
静かな図書室でエレンが急に大声を出すものだから、周囲の視線はいっきに私たちに向けられた。私は静かに人差し指を唇に添えて、エレンを静止させた。そして、椅子に座らせた。
「当たり前でしょ。誰にも言ってないもの」
私は手元のレポートを書き進めながら、眈々と語る。
「年明けして後期の授業終えたらすぐに出発する」
目線をちらりと彼に向ければ、人相の悪い顔で睨んでくる。完全に彼は怒っていた。私は構わずひたすら手を動かす。
「なんでまた急に」
「急じゃないよ。この大学に入ったのも、目的の留学先があったからここにしたの」
「いつ帰ってくる」
「夏、かな」
あっという間だよ。そう言おうとした。
「俺も行く」
彼の予想を斜め上を行く言葉が遮った。彼の目は真剣そのもので、私を見つめる。けれど、そんな突飛な台詞を言ってくるものだからついおかしくなって、小さく笑ってしまった。
「なに言ってるのよ。残念だけど、もう募集終わってる。エレンには悪いけど、私一人で行く。色んなこと、学びたいんだ」
「俺と、……俺と離れてもいいのかよ」
注意していないと聞き漏らしてしまうような小さな声で言う。彼の顔は真っ赤だ。
普段、甘い言葉とか好意を全面に出すようなことをしない彼がそんなこと言うから私は嬉しくなってしまった。つい、顔がにやけてしまう。そんな私を見て彼は、俺は真剣なんだぞ、と怒りだす。ああ、私、愛されてるなあ。
「さみしくないよ、だって気持ちはどこにいたって一緒でしょ」
笑って言うと、彼は、花子には勝てないなと溜息をついた。
帰り道、ずっとお互いの手を離さなかった。
私はあのときを思い出しながら、異国の空を眺めるのだ。
title:過呼吸さま
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