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「お前の心臓貰うぞ。」



そう言って間髪入れずに私の心臓を抜かれた。四角い透明の箱みたいなものに浮かぶ自分の心臓はドクンドクンと脈打ち、まだ私が生きている事を主張している。心臓があった場所にはぽっかりと穴が空き、体に空洞をし作っていた。そう認識したすぐ後で、キャプテンは自分の心臓を私の時と同じ様に切り取り、何も言わずにキャプテンの心臓を私の左胸に空いた空洞に嵌め込んだ。パズルのピースみたいに納まったキャプテンの心臓は、最初から私の左胸にあったみたいに機能している。



「たった今からお前は俺だ。勝手に死ぬのは許さねェ。」
「荷が重過ぎないですか?」
「お互い様だ。それとも、俺のいない世界で生きたいか?」



じ、と私を見下ろす目は険しい。自意識過剰な事を言っておきながら、返事を待つその姿は虚勢を張っているようにしか見えない。私がキャプテンの言う事を否定するとでも思っているのだろうか。今までだってそんな事してきた覚えはないし、これからもする事はないだろう。キャプテンに着いてきた時点で私の命はキャプテンのものなのだから、好きに扱って構わない。キャプテンの言葉を肯定する意味を込めて頭を左右に振ると、満足気な笑みを浮かべたキャプテンがぐしゃぐしゃと私の頭を撫でた。