長谷部は朝弱い



長谷部は寝起きが悪いらしい。普段、早く起きた刀剣達に起こされている私が言うのもなんだが、長谷部も私と同じくらい寝汚いと、光忠君が言っていた。勿論、そんな長谷部の姿を見た事なんてない私は、そんな姿見たさに頑張って頑張って早起きをしてみたのである。主命とあらば、と何事も完璧にこなしてしまう長谷部のちょっと可愛げのある姿見たい。長谷部と同じ部屋で過ごしている光忠君と大倶利伽羅には協力をしてもらっている。光忠君は結構ノリノリなのに、大倶利伽羅は相変わらずで、起きてさっさとリビングに向かってしまった。



「何時もみたいに起こせばいいんだよね?」
「うん!よろしく。」



障子の前で簡単な作戦会議を済ませ、そ、と開けて中に入る。一応、抜き足差し足で侵入するも、光忠君が余りにも堂々と音を立てて入るので私の行動に意味はなかった。



「長谷部君!起きて!朝だよ!」



光忠君が容赦なく長谷部を起こしにかかる。肩を揺らし大声をあげるのだが、長谷部は小さく唸るだけでなかなか目を開けない。そ、と長谷部の顔を覗き込むと、普段キリリとした表情を見る事が多いせいか、幾らか幼い表情に自然と口元が緩む。眉間に皺を寄せて布団を顔の半分まで被る仕草なんて子供みたいだ。光忠君は少し困ったように笑い、肩を竦ませる。そんな光忠君に変わって肩を揺さぶってみると、呻き声が大きくなる。



「うぅ……。」
「ほら、早く起きないと名前ちゃんも起きてきちゃうよ。」
「ある、じ……の、名前を、気安く……呼ぶな。」



朝の挨拶もしないうちから、こんな事言ってくれるなんて。私の口元は緩みっぱなしで、光忠君が側にいる事も忘れて、にやにやと笑ってしまう。しつこいくらいに肩を揺さぶっていれば、ようやく起きる気になったのか、目を閉じたまま上半身だけを起こしてぼうっとしている長谷部が、ゆっくりと億劫そうに目を開ける。



「おはよう、長谷部君。僕は先に行ってるからね。」
「おはよう、長谷部。」
「…………!?あ、あるっ、あるじっ!?え、は、お、おはようございます!」



口元を抑えてはいるが、笑い声が漏れている光忠君が笑いながら部屋を後にする。長谷部は私が視界に入った途端に見る見る焦りだし、あたふたと慌て出した。そんな光景が微笑ましくて、私は思わず口元も抑えずに笑うのだった。




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