無限ループって、怖くね?



→現パロ
→前世で審神者やってた記憶持ち元主と記憶持ち長谷部の転生パロ



前世は超能力を持っていて世界を守っていた。なんて言ったら頭がおかしいと思われるかもしれないが、これが事実なのだから笑えない。巫女装束のようなものを着て、武装した多くの男性を引き連れて、何かよく分からない敵と戦っていた。そんな私も、今ではそこら辺にいる社会人である。周りと同じように進学し、就職し、働く。たったそれだけの、ありふれていて、どこにでもある平凡を手に入れた。不満はない。当たり前、平凡、普遍、そうしたものを求める私からすれば、毎日を刺激的に過ごす等という前世のような職の方が考えられなかった。



「ね、主。前のように、貴方のお好きに。」
「いやぁ……お好きにと言われても。」



だからといって、前世の記憶が悪いものばかりという訳ではない。楽しいものばかりではないけれど、それでも大切な思い出の様なものだ。忘れたいとは思わない。けれど、面倒な事もある。椅子に座りながら出された朝ご飯を食べていると、その直ぐ横、フローリングに正座をした長谷部が、朝にはとうてい似つかわしくない表情を浮かべて、ねっとりと私を見上げる。珈琲の入ったマグカップに口をつけながら適当に濁しても、私の膝に手を乗せてきて、逃げさせないと言わんばかりに見詰められた。へし切長谷部はその昔、仕事の良きパートナーであり、恋人でもあった。どうやら長谷部にも、その時の記憶があったようで、出会った時、お互いに見つめ合ったまま言葉を発する事が出来なかった。そして、口を開いたかと思えば、結婚しましょう!という第一声を発した事を私は忘れない。



「本日はお互いに休日ですし、何でもお申しつけください。なんでも、ね?」
「じゃあ、洗濯。」
「主。」
「はい、すみません。」



第一声からも分かる通り、長谷部の愛情表現の仕方はそのストイックな性格に似合わず露骨だ。スキンシップは激しいし、束縛も強い。勿論、それに黙っている私ではないが、惚れた弱みとは厄介なもので、ちょっとでも可愛げのある理由を述べられると簡単に折れてしまう。我ながらどうしようもない。少しキツめの口調で私を呼ぶ長谷部に素直に謝まれば、私を見上げる表情が少しだけ和らいだ。表情の意味も、言葉の意図も、全て分かっている。そういうお誘いなのだと。だが、いくら休日だからといえど、朝っぱらから盛るのは如何なものだろうか。雲一つない晴天が広がるお天道様の下で何をしようというのか。いや、ナニなんだけれども。そうではなく、こんな日には溜まった洗濯物を干して、ゆっくり朝食を食べて、お昼にはどこかランチに行ったりしてもいいんじゃないか。なんで休日にやる事がそれしかないんだ。ごくり、と珈琲を飲み込む。



「主、俺は貴方に忠実な犬です。お好きなように扱ってください。」
「うーん。そうは言われてもなぁ。」
「首輪でも、手錠でも、なんでもいいんです。貴方が俺を縛りつけて、貴方の思う通りに命令してくだされば……。」
「そんな趣味はない。」



どこからともなく取り出した首輪を、ぺい、と床に叩き落とすと、ひどく残念そうな声が聞こえる。二度と会う事は出来ないと思っていた。出会った当初は、そんな風に泣かれた。宥める意味を込めて抱き締めてやると、縋るように弱々しく背の服を掴まれた。そんな可愛らしかった長谷部は一体どこにいったのか。いや、今まで甘えられなかった反動なのかもしれない。そう思えば、この行動に答えてやらなければいけないと思うのだが、どうにも羞恥心が勝る。長谷部の作ってくれた目玉焼きを食べつつ、頭を悩ませた。



「そんな物なくても、長谷部は私の一番だよ。」
「! はい!俺は貴方の物です!」



少し落ち込んでいたようだが、そう声を掛けると勢いよく顔を上げて、ない筈の尻尾が大きく揺れているような気がした。昔から、長谷部は一番という言葉に弱い。それを知っていて利用する私は悪い奴かもしれない。小さな罪悪感に駆られながらも、嬉しそうにしているのだから、いいじゃないかと自分を落ち着かせた。



「そうだよね。なら、その首輪も要らないね。」
「では、主。なんでもご命令ください。」
「は?」
「貴方の一番である俺に、貴方の一番である証拠として、俺を使って確かめさせてください。ね?」



無限ループって、怖くね?




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