長谷部の裏切り



じわりじわりと胸元が痛む。口の中からどろりとした赤黒い液体が零れ落ちる。思うように動かない腕をどうにか動かして痛む胸を押さえる。呼吸が上手く出来ずにひゅーひゅーと喉が鳴る。重い体をなんとか動かして振り返った先には、何時ものように済ました顔をした長谷部が、その刀を後ろから私の胸に突き刺していた。



「ど、して…?」



自覚した途端、立っていられなくなって膝をついた。血が喉に詰まってゴホゴホと咳き込むが、その度に胸を激しい痛みが襲う。口元を手で覆ってもとめどなく溢れる血は、本丸の廊下を血で汚していく。深々と突き刺さった刀は私の体を貫通していて、少しでも視線を下げるとその切っ先が目に映ってしまう。



「どうして?貴方こそ、俺の主でもないのに、なぜ俺を扱えると思ったんです?」



ぐり、と刀の向きが変わったかと思うと、勢い良く刀剣を抜かれた。血が飛び散り、痛いどころの話じゃない。ぼたぼたと零れる血が、今や血だまりを作っていた。胸元を押さえる手には最早力が入らず、ぬるりとした血を掌全体で感じる事しか出来ない。



「ごほっ、ぐっ、は、せべ…!」
「俺の主は何時までも信長様だけだ。黒田もお前も、俺の主であるものか。」



私の横を通り過ぎ、どんどんと足音が遠くなっていく。同時に、どんどん目が霞んでいって、長谷部の後ろ姿がぼんやりとしか映らなくなる。痛い、苦しい、どうして。泣く元気もない。声なんて出ない。ただひたすら、どうして、という言葉ばかりが私の思考を支配した。




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