長谷部伯父さん



→長谷部が伯父設定の現パロ
→夢主が長谷部の姪
→いろいろあって(割愛)夏休みの間だけ長谷部伯父さん(独身)の家に預けられている



「長谷部伯父さん!わたあめ!わたあめ食べたい!」
「ああ、今買ってやるから、走るんじゃない。」



困ったように笑う伯父さんの手を引いた。浴衣も着せてもらって、足袋を履き、下駄まで履いたのは初めてだ。小さいながら、お洒落が出来て嬉しかった私は、慣れない下駄で小走りになりながら、わたあめの売っている屋台まで伯父さんを引っ張る。お小遣いは持ってきているけれど、それくらい買ってくれるという伯父さんの言葉に甘えた。伯父さんと屋台の人がお金をやり取りして、とうとう私の手にわたあめが手渡される。早速袋の中から取り出して、ふわふわなそれを食べた。



「伯父さんありがとう!すっごくおいしい!」
「ほら、しっかり歩かないと転ぶぞ。」
「うん。はい、伯父さんにもちょっとあげる。」



さっきから、伯父さんに叱られてばっかりだ。私は、この前テレビで観掛けた、甘い物はストレスを和らげるという情報を思い出し、わたあめを伯父さんへ向けて付き出した。伯父さんが叱るのは仕事が大変でストレスが溜まっているからに違いない。伯父さんは少し戸惑っていたが、そこは子供。どうして食べないんだろうと逆に首を傾げていれば、諦めたようにわたあめを少し口に含んで千切る。



「おいしい?」
「ああ、美味い美味い。」
「やったー!あ、次、次ね、ヨーヨーやりたい!」



そんな調子で伯父さんを連れ回していたと思う。ヨーヨーを吊り上げるのが下手な伯父さんの代わりに、私は二つヨーヨーを取って、一つを伯父さんにあげた。射的は上手で、全然的に当たらない私の代わりに一発で熊の人形を当ててくれた。今でも、その人形は私のベッド脇に置いてある。大事な宝物だ。お祭り定番のたこ焼きを食べたり、かき氷も食べた。既にお腹はいっぱいになっていたから、林檎飴は持ち帰る事にした。



「伯父さん、金魚もやりたい。」
「ん?金魚掬いか?」
「それ!」



ぐいぐい、と伯父さんの甚平を引っ張って、金魚掬いの屋台を指差す。そこでは、既に何人かの子供が金魚掬いに挑戦していて、悪戦苦闘しているようだった。しかし、今迄はすんなり許可を出してくれていた伯父さんだが、少し悩んだ末、私の頭を撫でた。



「もう直ぐ向こうの家に帰る事になるだろう?最後まで面倒見切れない生き物は、そう簡単に飼うべきじゃない。分かるか?」



私の身長に合わせてしゃがみこんだ伯父さんが、寂しそうに問うた。確かに、私が今このお祭りで金魚を持って帰れば、この金魚の主は私だ。その主がいなくなれば、伯父さんが金魚のお世話をしなければならない。幼いながらに、それは無責任だと感じていた。だからこそ、伯父さんの言う事に私は自然と深く頷いていた。そうか、と一言漏らした伯父さんは私の手を引いて、そろそろ帰ろうと言う。また一つ、私は頷いて、伯父さんの手を掴んだ。ちらりと見上げると、伯父さんとお父さんが、凄く似ていると思った。



「伯父さん、お父さんにそっくり。」
「そうか?まぁ、兄弟だからな。」
「お父さん、今どうしてるのかなぁ。」



ぽつり、と呟いた。寂しくないと言えば嘘になる。伯父さんは好きだ。大好きだけれど、決して家族ではない。実の父親、母親とは、何かが異なるのだ。けれども、こんなにも充実した夏休みを過ごしたのも初めてで、私の中で伯父さんも大事な人である事に変わりはなかった。ぎゅ、と大きな手を握ると、伯父さんは、どうだろうな、と呟いた。見上げると、どこか寂しそうに道路の先を眺めているから、何かあるのかと思ったけれど、どんなに目を凝らしても、先にはただ何時も通る道が続いているだけだった。



――――
書きたいところだけ書いた。長谷部の姪になりたい。




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