恋は下心、愛は真心



「光忠は優しいね。」



少し仕事を手伝っただけ。空いてる時間に家事をしただけ。遠征先で仲間の手助けをしただけ。たったそれだけで、彼女は僕を優しいと認識する。僕が全て計算しているとは、微塵も思っていないらしい。近侍でもない僕が彼女の仕事の手伝いをするのは、近侍ではなくても彼女の側に少しでも長くいたいからだ。家事をこなせば、僕がいない間に部屋が散らかり、洗濯物が溜まって、美味しいご飯が食べれない。そうすれば、僕の存在が彼女に必要な存在だと、居なくなる度に確認させる事が出来る。遠征先で自分の功績にするのではなく、仲間の功績の手助けをするのは、周りに気を遣える親切な奴だと認識させるためだ。何をするにも計算している僕を、彼女は優しいという。何も知らないで表面だけ見ているからそうなるんだ。愚かだと思う。けれど、僕の掌の上で転がされている、その愚かさすら愛おしい。



「そんな事ないよ。何時でも手伝うから、また声を掛けてね。」
「うん、助かる。」



部屋の中に書類を運んだだけ。たったそれだけで彼女は笑顔を見せてくれる。何て安い笑顔だろう。しかし、そんな安い笑顔も僕は嫌いじゃない。僕は彼女の愚かで浅ましい部分も含めて好きなんだ。付喪神である僕にはない、矛盾を孕んだ人間である彼女が愛しくて仕方がない。恋は下心、愛は真心とはよく言ったものだが、僕の下心が真心になる日はやってくるのだろうか。神と名乗る僕にも、それは分からない事だった。




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