夢と現実がごっちゃになる



毎夜毎夜、懲りずに同じ夢を見る。まるで盛りのついた犬のように、その華奢な体を組敷いて、俺を否定する口を塞いで、貪るように犯す夢を見る。夢とは記憶の整理だとか、自分の欲望を示すだとか、諸説あるが、ほとほと自分で自分に呆れる。それ程までに恋焦がれているといえば可愛げがあるかもしれないが、夢の内容はとても可愛いなどという言葉で済ませられるものではない。目を覚まして体を起こすが、何もしていない筈なのに体は重く、晴天を示したような太陽の日差しが余計に俺を憂鬱にさせた。

***

時折、その姿を見ると自分の欲が溢れてくるような、そんな時がある。その姿が、あまりにも夢と酷似していて、今俺は夢の中にいるのではないかと、そんな錯覚に陥る事がある。勿論、それが夢である筈がなく。夢ならば、何をしても許されるのではないか。そんな甘い考えを、まるで叱咤されているような気になる。



「ねぇ、どうかした?」



不意に、主が俺の側にいらっしゃる。どうにか別の事を考えようと必死になっている俺の気など露ほども知らず、無防備に近寄る主は、どこか心配そうに俺を見詰めていた。ああ、なんと間の悪い。今こそ俺の事など放っておいてくだされば宜しいというのに。今にも手が出てしまいそうな自分の欲をどうにか抑えるのに必死で、しかし、返事をしない俺を不審に思った主は余計に俺の側へと近寄ってくる。



「具合悪いの?長谷部、なんか変だよ。」



伸びてきた手は一体何をするつもりだったのだろうか。その手を無理矢理掴んで引き寄せ、腕の中に閉じ込めてしまった今、分かりもしない事だ。自分でやった事だというのに、壊れたかのように忙しなく動く心臓に笑うしかない。夢の中では、肌の感触や温もりは分からなかった。その柔さや心臓の動きや、呼吸一つ、今は手に取るように分かる。驚いて身動きをとれないでいる主は今、何を思っているだろう。



「俺は、臣下失格です。」



目を見開いて驚いている主に失笑し、その唇に自分のものを重ねた。




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