久しぶりにゆっくり寝ることが出来た。ここのところ、残業続きの早番続きで何度上司にあたる若造を張り倒したくなったことか。まぁ、それも昨日で終わり、今はこうしてゆっくり出来ているからいいとするか。小生なんて懐が広いんだ。伸びをしながら起き上れば横ではテレビ画面に夢中になる名前の姿。



「お前さん起きとったのか。早いな。」
「もうお昼過ぎてるよ。」



時計を見てみれば確かに12時を過ぎている。しかし、疲労と睡眠不足が重なれば、たまには昼過ぎまで寝たって許されるだろう。大きな欠伸を一つ漏らしながら、名前に視線を戻せば、相変わらずその目はテレビ画面に夢中。しかし、その姿は昨日小生が投げ捨てたワイシャツを身に纏っていて、何とも男の浪漫を刺激する格好だ。自然と頬の筋肉が緩むのも仕方のないことだろう。



「まぁ、そう言うな。昨日は寝るのが遅かっただろ?」
「それ以上喋らないで。セクハラに繋がりそうだから。」



ちっともテレビ画面から目は離さず、言い方は冷たいくせに、頬を赤く染める辺りからかいがいがあるし可愛気もある。思わずニヤリと笑って後ろから名前のことを抱き締めた。小生のことなど見向きもしていなかったせいで、その行動に驚いたのか分かりやすく体が跳ねた。よくよく見ると、名前はテレビに夢中なのではなく、テレビゲームに夢中になっている。



「ほ〜う?昨日セクハラどころかそれ以上のことをしておいて一人だけ澄ました顔するのは頂けないねぇ。」
「…喋んないで。あと邪魔。負けちゃうじゃん。」



すっかり耳まで真っ赤にしている癖に良く言う。しかし、あまりからかい過ぎると本当に怒られてしまうから、今はこの辺で止めておこう。それこそ昨日散々からかい倒したし。名残惜しくも体を離せば、名前はちらりとだけ小生に視線を寄越し、再び画面を見詰める。そんな名前の態度に思わず笑みが零れた。よく言うだろう。目は口ほどに物を言うってな。



「…何笑ってんの。」
「いやいや、お前さんが可愛いと思ってな。」
「……っ!いいから早く起きろ!」
「なっ、なんだぁ?」
「洗濯するの!」



コントローラーから手を離し、ようやくその視線が小生とかち合う。とは言っても小生の目は前髪で隠れているから、目が合っていると感じるのは小生が一方的にだが。布団を剥ぎ取り、立ち上がった名前の姿に少なからず期待をしていたのだが、ワイシャツだけなどということはなく。下には小生がいつも寝る時に使うスウェットを履いている。がっくりと肩を落とせば、蔑んだような視線を向けられた。別に小生は悪くないだろ。男なら皆期待くらいするさ!しかしながら、刺さる視線に耐えられなくなり、適当に着替えを済ませて汚れたシーツやら何やらを洗濯機に突っ込んだ。そして、なぜかその後ろを着いてくる名前はどこか落ち着きなく、そわそわしている。



「か、官兵衛さん、あの、明日も、仕事?」



先程の威勢はどこへやら。すっかりしおらしくなって俯いた名前の声は消え入りそうだった。多少驚きながらも、言葉の意味を考えてから、ああ、しまったと気がついた。どこぞの誰かさんのせいで残業続きの早番続き。家には帰って寝るだけの生活。そんな状態で名前と会う時間など取れる筈もなく、久々に会えたのが昨日で、少なからず寂しい思いをさせていたのだろう。小生だけなら未だしも、名前にそんな思いをさせるなんて。三成め、今度あったらただじゃおかん。



「明日も休みをもらってな。どこか連れてってやろうか?」
「え?ほ、本当?」
「こんな嘘ついてもどうしようもないだろう?」



顔を上げた名前は、それはもう嬉しそうで。そんな笑顔を見ていると今なら我が儘を言われても何でもいうことを聞いてしまいそうだ、なんて思ったしまうのだ。



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何歳差か考えてなかったけど犯罪ではない。
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