「貴様、左近の部下ならば賭博などさせぬよう、しっかりと監視をするなり何なりしておけ。」



私の事を見つけるなり、三成様は睨みながら言った。私はといえば、まさか覚えられているとは思わず、口をぽかんと大きく開けて驚いた。初めての接触が軽いお咎めだった訳だけれども。唖然とする私を余所に、三成様は苛立ちを隠そうともせず眉間に皺を寄せる。そこでようやく曖昧ながらも返事だけはしておいた。返事を聞いた三成様は早々に背を向けて去って行き、それを見計らったかのように、ぼろぼろの左近さんが私に手当を求めて来た。二人の様子から、三成様は左近さんをお説教した後、直ぐに私に出会したから機嫌があまり宜しくなかったのかもしれない。いや、常時あの調子なのかもしれないが。



「左近さんいい加減博打止めてくださいよ。とうとう、今日私が三成様に怒られちゃいましたよ。」
「マジ?名前って、確か今迄三成様と面識なかったよな?三成様超カッケーっしょ!」
「そういう問題じゃないです。あと、カッケーっていうか怖かったです。」
「まっ、三成様の格好良さは戦場に出ると分かるっつーか「話逸らしても無駄ですよ。」」



あまり、博打に関してはとやかく言ってこなかった。個人の自由だし、私は一応左近さんの部下だし、私生活の部分に干渉していられる程、私だって暇じゃない。勿論、三成様はそれがお気に召さず、豊臣の為に働け、と怒っていたのも知っている。それでも、左近さんは三成様の目を掻い潜って博打をしに行くし、私はそれで構わないと思っていた。だが、三成様に私が怒られるとなれば話は別だ。自分に被害が被る以上、咎めない訳にはいかない。現金かもしれないが、私だって自分が可愛い。今後、三成様に怒られるのはご免である。



「俺、博打がないと生きて行けねーっての。止めるなんて無理っしょ!」
「せめて三成様にばれないように、短時間で済ませるとか……。」
「うーん、賭けしてっと時間忘れちまうんだよなぁ。」
「じゃあ、三成様にばれないように、夜に行くとか。」
「夜は刑部さんの監視がさ。」
「何をしている。」



気付けば一緒になって、如何に三成様にばれずに博打をしに行くか、なんて真剣に考えていたのが悪かったのだろうか。ゆらりと背後に立つ人物は物騒な程に恐ろしい形相をしていた。思わず、視線を左近さんに向けると、目が合う。その目が危険である事を告げていて、もう三成様を直視するなんてできっこない。



「豊臣の為ならいざ知らず、そのような腑抜けた事に現を抜かすなど、許しはしない!!!」



瞬時に抜かれる刀に私と左近さんは同時に逃げ出した。



((三成様ー!ごめんなさい!))
(黙れ!声を揃えるな!)
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