→激しいキャラ崩壊



「名前の下着を寄越せ。」
「…………。」



突然家に上がり込んできた石田君の第一声がこれでした。連絡すら寄越さず、仮にも女の家に突然上がり込む事すらどうかと思うのに、第一声がこれって。しかし、こんな事は石田君にとっては序ノ口であり、私もこんな事だけで驚いている場合ではない。咳払いを一つして、落ち着く事にしよう。



「石田君、あのね」
「三成だ。」
「み、三成君?あのね、毎回毎回私の下着なんて持って行ってどうするの?」



私がこんな事で驚いていられないのは、これが習慣のようになってしまっているからだ。勿論、凄く迷惑だし凄く困っているのだが、いし、三成君は何を勘違いしているのか、嫌よ嫌よも好きのうち精神だと思っているらしい。勘違いも甚だしい。それに、被害は下着だけでは留まらない。私が使っている文房具がなくなっていたり、気付いたら私のベッドの上で寝ていたりするので、出る所に出れば私は確実に勝てる。私がそうしない理由に、三成君が知り合いである事と普段は勉強を教えてくれたり、困った時に助けてくれるからだ。この悪癖だけ治してくれれば、何度そう思っただろうか。



「愚問だな。使用用途など幾らでも存在する。まず、鑑賞する。」
「待って。」
「その次に使用す「待って!」」



三成君は私の質問に対してさも当然と言わんばかりに答えているが、これが止められずにいられるか。下着を鑑賞するって何。もうその時点で私には分からない世界だ。というか、鑑賞から次の段階がレベルアップし過ぎだろう。思わず大声で止めに入ると、三成君は眉間に皺を寄せて不機嫌そうに私を睨み付ける。



「名前から聞いておいて話を遮るとは、どういう事だ。」
「いや、どうもこうもないっていうか……。やっぱり聞きたくなかったというか……。」
「ふん、このような事、序ノ口に過ぎん。」



これが序ノ口ってどういう事だよ。出掛かった言葉は何とか飲み込んだ。この際、三成君の下着に関する事などどうでもいい。問題は、この悪癖を止めさせなければならないという事だ。普通にやってる事は犯罪だし、下着だって安くはない。そう何度もホイホイ持って行かれては困る。既に怯みそうになっている自分を心の中で叱咤して、三成君を出来得る限り睨み付けるようにして見上げた。



「三成君!いい加減下着くすねて行くの止めてよね!」
「断る。」
「断らないでよ!?下着って結構高いんだからね。なくなる度に出費する私の身にもなって。」
「なんだ、そのような事か。ならば、今後私が買ってやろう。」



おかしい。私の想像の中では私が三成君を叱る事で下着を取らなくなる筈だったのに、会話の方向がおかしい。思わず、ぽかん、と口が開いてしまった。相当間抜け面を晒しているに違いない。証拠に三成君の顔つきが険しくなっている。



「さっさと口を閉じろ。それとも私の凶王でも突っ込んで欲しいのか?」
「流れるような下ネタ止めて。違う、そうじゃなくて!待って。三成君が下着をとらなければ、新しく買う必要なんてないんだよ?」
「私が買えば、下着を取っても良いという事だろう。」
「逆説的な発想止めてくれない!?」



思わず項垂れる私に三成君は、心底訳が分からなそうにしている。三成君の説得には、もう暫く時間が掛りそうだ。



―――
ワシの権現がって下ネタがあるなら、私の凶王っていう下ネタもありだよね。
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