吉継君の数少ない友達は石田三成君といって、とても格好良くて頭が良い。スタイルも良くて背も高い。少しでも交流のある女の子達は、こぞって彼にアピールを繰り返すが、彼は見向きもせず、寧ろ怒っているように見えて、私や吉継君は内心冷や冷やしている。吉継君は、面白がっているかもしれないが。私の昔馴染みである吉継君という人は、かなり図太い神経の持ち主で、独特の笑い方をしながら平気でお怒り中の石田君の隣に座るのだ。そんな二人を遠くから見ていたが、石田君はやはり怒っているようで、やはり吉継君は笑っていた。私も一応、吉継君との繋がりで石田君とは知り合いだが、怒った石田君が怖い事はよく知っているので触らぬ神に祟りなし精神で仲良しの友達の元へと駆け寄る。
そんな学生生活を送っていたのだが、吉継君は元々病気がちで、授業を休む事も多い。それは必然的に石田君の隣が空きスペースになる事を意味していた。勿論、授業が変われば、他の学部の友達と座っているようだが、学部専攻となるとそうはいかないらしい。女の子達がそれを見逃す筈もなく、彼の隣や前後に席をとって話し掛けている。石田君はといえば、本を読みながら総スルーしているようだが、段々と雰囲気が悪くなってくる。負のオーラとでも言うのだろうか、そういうものが立ち込め始めた。結局のところ、彼にスルースキルというものは備わっていないらしい。だからといって、私は怒った石田君など怖くて近寄れない。憐れ石田君、今日、この授業を乗り切れば終わりだよ、なんて思いながら、いそいそ友達の元へ向かう。しかし、石田君は荷物をまとめて立ち上がり、ずかずか私の目の前に歩いて来ると、無言で腕を掴んで空いている机に座らされた。一つ席を挟んで隣。唖然とする私を余所に、石田君は再び本を取り出している。



「……はっ!い、石田君、私向こうに友達が」
「知るか。貴様はそこにいろ。」



我に返った私の返答に知るかってどういう事ですか。出掛かった言葉を何とか抑えて、溜め息を吐いた。驚いた様子で私を見詰める石田君の取り巻きと、私の友達。居た堪れない視線に縮こまりながら、携帯を取り出して友達に連絡を入れる。変な誤解だけは避けたい。石田君の取り巻きに関しては、話した事もない子達だから弁解も何もないけれど。睨み付けるような視線と、疑惑の眼差しと、いろんな視線が注がれているにも関わらず、素知らぬふりをして読書を続ける石田君も吉継君に負けず劣らずの神経を持ち合わせていると感じた。妙に長い10分休憩が、ようやく終わりを告げ、授業が始まる。注がれていた視線は徐々に減って、20分も経てば視線は全て黒板や先生に注がれる。私はようやく石田君に声を掛ける事が出来た。



「石田君さ、女の子除けに私を使わないでよ。皆の視線が痛いよ。」
「授業中だぞ、黙れ。」
「だって、石田君授業終わったら直ぐ帰っちゃって、まともに話しが出来ないんだもん。」
「女共のせいだ。」
「いや、だからね?」



こそこそと口で攻防戦を繰り広げた結果、この授業で私は石田君の隣に座る事を余儀なくされた。吉継君の病気が少しでも良くなるよう、今まで以上に祈るしかないと思った。
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