→トリップ夢主
→三成に拾われて女中してる



女中というのは案外忙しい仕事らしい。戦中は凄まじい早さでご飯を作ったり縫物をしたり、戦に勝ったら勝ったで宴を開く為にご飯の準備。そして、宴が始まればお酒を運んでお酌してご飯を作って。あっちへ行ったりこっちへ行ったり。休む暇などなく、ある意味女中にとってはどちらも戦場であった。まだまだ慣れない私も四苦八苦しながら、あっちへお酌し次にご飯を運んで、そっちにお酌してご飯運んで、また厨房に戻って。正直もうくたくただが、私より働いている他の女中さんを見ていると、そうも言ってられないのである。



「名前!どこにいる!」



宴会特有の喧騒に包まれた部屋に男の声が響く。場が静かになることはなかったが、何度も名前を連呼されると、周りもこぞって#name2#のことを探し出す為に無視すら容易ではない。今は誰か特定の人に構ってる暇などないというのに。他の女中さんに目配せをしてから溜め息を飲み込み、男の元に駆け寄った。



「はいはい、三成様。どうしました。」
「貴様どこに行っていた!私の側を離れるなと言っただろう!私を裏切るのか!」
「三成様しっかりして。」



すっかり出来あがっている三成様から、いつもの視線だけで人を殺せそうな鋭さは感じられず、視線の先も定まっていないようだった。杯を持ちながら、ああだこうだ、妙に説教臭いことをぬかす三成様に適当な相槌を打ちながら、視線だけ辺りを見回した。よくよく見れば出来あがっている人ばかりで雑魚寝を始めている人までいる。通りで三成様も酔いが回る訳だ。そろそろ食器やお酒を少しずつ片付けてもいいかもしれない。そんなことを考えていれば、思い切り両頬を叩かれた、のではなく、馬鹿みたいな力で両頬を挟まれた。痛い。



「なっ、なにひゅるんでふかー!」
「私の話を聞いているのか!先程からふらふらふらふら、どこぞの馬の骨とも知れない男の元に行きおって!」
「ヒュー!お二人さんあっついねぇ!」
「左近、ぬしには名前のゴミでも見るような目が仲睦まじく見えるのか。我には理解出来ぬ。不思議、フシギよ。」



三成様の言い方だと私がビッチって誤解を招きそうだから止めて欲しい。はやし立てるように左近さんがぎゃあぎゃあ騒ぎながら煽る。刑部さんはたいして酔っていないようで助かった。これだからお子ちゃま共は。ぎゅうぎゅう頬を挟む手を無理矢理引き剥がして、私は三成様からお酒を取り上げた。



「呑み過ぎですよ!今水持ってきますから、待っててくだ「貴様!私の側から離れることは許可しない!」」
「いや、だから、水……。ええい!うるさい!離しなさい!」



最終的に女中さんから三成様の側にいてあげなさいと言われてぐうの音も出なくなった。あの時の三成様のドヤ顔が暫く忘れられなそう、腹立って。
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