jojo | ナノ




無駄親子


「腹が減ったぞ。」
「…トマトジュースあるよ。」



部屋から出た途端、どこに行くにも後ろを着いてくる父親とかどうなの。信じられないことに私の父親は人間ではなく吸血鬼らしい。その為父の食事は人間の血だ。私がこの家に来るまではどこからか調達した血を飲んだり、父親を盲心的に愛している女の家に転がりこんだりしていたらしい。そんなの今まで平和に過ごしていた私からしてみれば信じられないし、まずそんなこと見逃せない。誤って殺してしまったら大変だ。そう注意したところ、それなら私の血を寄越せと言うことで決着がついてしまった。正直首を突っ込まなければ良かったと思った。ジョルノの哀れな視線が余計に辛かった。しかし、私の血で3食は流石に無理なので、未だにどこからか調達した血を飲んだりもしているらしいが。そもそも、そこまでこの人に食事が必要なのかが謎だ。そんだけ筋肉ムキムキなら暫くいらないんじゃないか。そう思っても父親は食事をせがんでくる。どっちが親なんだと呆れてくる。



「そんなもの要らん!」
「…悪いけど今日は無理。」



どうやら私はこの父親の影響か、普通の人間よりも体が丈夫らしい。傷の治りも早いし、食事と称した吸血をされているにも関わらず貧血になった試しがない。もしかしたら父親が加減をしているのかもしれないが、そこまでは流石に知り得ない。しかし、いくら頑丈とは言え、女であれば月に一度必ずやってくる生理現象には抗えないのだ。勿論それは人間である私も例外じゃない。紅茶を飲もうとキッチンに向かう間中、父親は後ろから抱き締めるようにしてぴったりくっついて離れなかった。歩きにくいし鬱陶しい。



「まさか、またか!WRYYYYYY!!!これだから人間の女は!」
「これを機にトマトジュースで生きていける体に改善しよう?」
「出来る訳なかろうが!この阿保がァーッ!」
「ちょ、ちょっと!」



ご飯が食べれないから癇癪を起すって子供か!ガジガシと甘噛みするように首筋に歯を立てられた。娘を労る気がないのだろうか、この父親は!ただでさえ、無償で血が出血してるというのに、他人にやる分なんてないわ!呻く父親の頭を引っ掴んで無理矢理引き離した。



「倒れたらどうするの!」
「WRY……今までそんなことなかったではないか。」
「それは至って健康状態だったから!今は違うの!」



親を叱りつける子供とは可笑しな光景だと思う。しゅんと潮らしくなってしまった父親に一抹の罪悪感を覚える。しかし、ここで甘やかしてはいけない。何分調子に乗りやすいこの人は少しでも気を許せば血を貪りにかかるだろう。視線だけを逸らして溜め息を吐いた。怒鳴り声を聞き付けたのか、ジョルノが部屋から歩いてこちらの様子を見に来ていた。



「全く、何をしてるんです?」
「ハルノ……。」
「ご飯の話。ごめんね、うるさくして。」



呆れているのか、それとも少し怒っているのか、あまり表情は読み取れないけれど、どちらにしても迷惑を掛けてしまったらしい。忙しいジョルノの身だ。今も何かしらに手をつけていたに違いない。素直に謝れば、柔らかい笑みを返してくれた。



「いえ、いいんですよ。名前は気にしなくても。それよりも、いい歳こいた大人が駄々をこねると言う見苦しい行為に僕は怒ってるだけですから。ね、パードレ?」
「うりぃ!?」



目が全く笑っていないジョルノに自然と苦笑いになるが、それを罪悪感もなしに言い放つのは流石というべきか。驚いた様子の父親がジョルノに視線を移した。



「なんとなく何時もの流れなことは想像出来ます。しかし、何度も同じことを繰り返すってことはパードレはやっぱり頭が悪いんですか?無理だと言われたら一度で覚えてくださいよ。」
「し、しかしだな、そこら辺の血よりも名前の血の方が…」
「彼女の負担を考えられないんですか?これだって何十回と言いましたよね?」
「う、うりぃ……。」
「名前の処女の血は確かに美味しいのかもしれませんが、逆にそんな美味しい血を提供する彼女に感謝でも示したらどうです?」
「処女とか言うの止めてくれない!?」



ああ、すみません、なんて反省の色など全く見受けられない全快の笑顔を向けられても困る。二人に一切そんな話したことないのに、なぜ私が処女だと分かる…。それも問題だけれど、それを本人の前で話題にするこの親子にデリカシーというものは存在しないのだろうか。恥ずかしく思ってしまった自分が馬鹿らしく思える。



「しかし、貴方が処女でなくては。僕が手を出す前に処女を喪失したなんて話を聞いた暁には、その男殺します。」
「怖い…。ギャングのボス怖い…。」
「私の娘に手を出した男など一瞬で肉塊にしてくれるッ!!!ハルノ、それはお前とて変わらぬぞ。名前は私と結婚するんだ!小さい頃に約束したんだッ!」
「小さい頃にお前私の側にいなかっただろ。」



私の言葉など一切無視して火花を散らす親子。冗談が冗談に聞こえないところがこの親子の怖いところだ。この際、飲み物は諦めるとして気付かれぬうちに部屋に戻ってしまおう。ゆっくりと足を踏み出せば両肩をガッシリと掴まれて体が飛び上った。



「ひっ!」
「名前!お前はこのDIOと結婚するんだよなッ!?」
「名前は僕に処女を捧げるんですよねッ!?」
「いや、どっちもないけど!?」



二人の手を振り払って部屋までダッシュした。


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