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DIOとバレンタイン


「チョコ食べたいなぁ。」



1週間程前だろうか。確か#name2#はそんな台詞を呟いた。バレンタインが迫ると、チョコレート会社の陰謀により、テレビや雑誌、はたまた店頭やインターネットの記事までチョコレート一色に染まる。お陰でこちらは普段食べてもいないチョコレートが気にはなる訳で。テレビに映し出された一粒何千円もする高級チョコレートに、食べれはしないだろうけれど、食べてみたいな、という思いを込めて呟いた台詞だった。



「なにこれ?」
「チョコレートだが?」
「いや、それくらい分かるけど?」



机一杯に並べられたチョコレートにただただ唖然とした。色とりどりの包装はどれも高級感を漂わせ、その中にはテレビや雑誌で見掛けた一粒何千円もするチョコレートのような物も混じっている。驚いて、目の前で踏ん反り返っているDIOを見遣るも、事もなげな顔をしてこちらの反応を窺っているようだった。#name2#はといえば、意味が分からずに首を傾げるばかりである。



「チョコが食いたいと言っていただろう。だから買ってきた。」
「こんなに?」
「ああ。」
「テレンスさんとかにもあげるんだよね?」
「全て名前のだ。」



あんぐりと口を開けて間抜け面を晒す#name2#の反応はDIOの思っていた反応とは違うらしく眉間に皺を寄せていた。嬉しくないかと言われれば勿論嬉しい。あんなに食べたかった、そして食べられないと思っていた高級チョコレートが目の前に幾つも広がっているのだ。今年はこれによう、来年はあれにしよう、なんて、下手したら何年もかけて食べるかもしれないチョコレートが集合している。何より#name2#が何気なく呟いた言葉を覚えて用意してくれたことが嬉しい。けれど、驚き過ぎて言葉にならない。先程から何度もDIOの顔と机一杯に広がるチョコレートを見比べて言葉にならない声を紡ぐだけだった。



「気に入らないか?ならば捨てろ。別のを用意させる。なにがいい?」
「違う違う!いっぱいあり過ぎて、困るというか、どうしていいか分からないというか。」
「困るのか?」
「嬉しい!凄く嬉しいよ!」



嬉しいを前提にした困るだったけれど、DIOはハッキリ言わないと分からないらしい。更に増えた眉間の皺に思わず両手を左右に振って嬉しいとだけ伝えると、再び満足そうに笑った。それに一安心した#name2#は胸を撫で下ろす。こんなに沢山の高級チョコレートを用意するなんて、流石DIOというか。真似出来ない行動力に圧倒されながらも、今は素直にこの贈り物を喜んでおこう。



「バレンタインに贈るって意味を含めて受け取るよ?」
「当然だ。その為にわざわざこの日に取り寄せたのだからな。」



相変わらず自信満々な表情のDIOに何となく悔しかったから、もう少し愛の言葉は飲み込んでおくことにした。


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