jojo | ナノ




リゾット


「名前、ネクタイがない。」
「え?タンスの中は?」
「いや、タンスの中に入ってるものじゃあなくて、この前使ったのが良い。」
「あ、それなら確かこの前見掛けたなぁ。ちょっと待ってて。」
「ああ、頼む。」



リゾットと名前のやり取りを、ソファーに座って眺めながら、プロシュートは煙草の煙を吐き出した。隣に座っているペッシはせっせと報告書を書いている。ぱたぱたと走ってリビングを出ていった名前の背中を、いつまでも見詰めているリゾットのその姿は自分よりも大きな図体をしていながら、良い子で母親を待つ子供のようだ、とプロシュートは思っていた。暫くすると、再び名前がぱたぱたと走りながら、手にはちゃんと指定されたネクタイを持って戻って来ていた。



「これで合ってる?」
「グラッツェ、助かった。」



そう言いながら名前の額にキスを落とすリゾットを見ていると、あいつもそういえばイタリア男だったということをプロシュートは思い出していた。地道に書類整理はすりし、仕事をサボるなんてこともしない。まるで日本人のようにきっちりと仕事をこなすせいで、見慣れたその行為もリゾットがやるとなぜか新鮮に感じたのである。相変わらず表情の変わらないリゾットとは対象的に、名前はたったそれだけで頬を染めて、目を白黒させていた。



「本当、仲良しですよねェ。」



感心したような呆れたような、そんな声に、ちらりと、隣に座るペッシに視線だけを向けた。その際、プロシュートは何の気なしに煙草の煙をペッシに向かって吐き出してしまった。その煙が目に染みたのかペッシは目を抑えながら小さく唸っている。軽く謝罪をすると、大丈夫ですと返事がくる。



「で?なんだって?」
「え?あぁ、えっと、名前とリーダーが仲良しだって話です。」
「まァ、恋人同士だしな。」
「そうなんですけど。この前もリーダーが名前に財布がないって探してもらってまして。服を探してもらったり、コートを持ってきてもらったり、バスタオル持ってきてもらったりしてましたぜ。」



そのペッシの言葉に、自分のことくらい自分で管理しろよ、とプロシュートはただただ呆れていた。そんな表情が顔に出ていたのかペッシは苦笑いをしている。特に気にもせず、呆れた表情のまま再び視線を二人に向ければ、名前がリゾットのネクタイを結んでやっていた。これから仕事だってのに、デレデレしてんじゃあねェぞ、と一括してやりたい気持ちをグッと抑えて、プロシュートは二人に向かって煙を吐き出した。勿論、その煙が届くことはないが。


[戻る]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -