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スタンドが見えない 暗チver


→ソルジェラに関して少しBL表現あるので、嫌いな方は注意



この街には不思議な人が多い。

不思議な人その1、走るのがめちゃくちゃ早い人。走ると言うより滑ると言った方が正しいかもしれない。ローラースケートでも履いてるのか、風を割いて横切る音がするくらいには早い。横切られた瞬間、まるで真冬のような冷気が肌を撫でるくらい早い。あまりにも速いので、正面から顔を見たことはないが、その後ろ姿を眺めながら、今日も早いな。今日も見事なパーマだな。なんてくだらないことを考えながら彼とは対照的に私はゆったりと歩いた。

不思議な人その2、何か見えてる人。街を歩いているとたまにだが、一人で何かを喋っている人がいる。その人は突如絵本を取り出して一生懸命何もいない空間に向かって何かを説明しているのだ。どう見ても不審者です。時折、絵本片手に凄くいいぞッ!などと独り言も漏らしている。どう見ても不審者です。その一生懸命さをどこか別のところで発揮出来ないものか。そんなお兄さんを、こちらが怪しまれないようチラチラ視線だけで盗み見ながら、絡まれないようにそそくさと立ち去った。

不思議な人その3、突然現れる人。寂れた田舎の電車に乗る人なんていうのは結構決まっていたりする。例えば、出勤途中のサラリーマンや学生とか。その中でも定期的に見掛けるのが、やたら体格のいい、目が病気なのかと思わせるような人だった。その人は、身長が高いので比較的見掛けやすく、出くわす度に目で追っていた。なんせ彼は気付くといなくなってしまうのだ。今日も電車を待ちながら、ホームにいる彼を見掛けた。数人の列で電車を待つ彼を今日こそは見失わないように目を凝らした。しかしながら、瞬きを1度2度。その間にいなくなってしまった。何のマジックだ。イリュージョンか。ホームをきょろきょろ見回しても見当たらない。それなのに、電車が来て座席に着く頃には向かいに座っていたりする。そしていつも、どこで降りているのか分からない。もしかして、幽霊なのだろうか。

不思議な人その4、やたら猫に嫌われてる人。一体何をしたらそんなに嫌われるのかと思うくらい、猫に避けられていた。たまに、パーティーでも開催されているのかと思わせるくらいに猫が一ヶ所に集まっていることがある。それを見掛けてしまうと、あまりの可愛さに遠目から何分も眺めているのだが、その人はジリジリと猫達に近付いた。本当に少しずつ、身を屈めて、なるべく猫達に視線を合わせて。しかしながら、猫達はまた奴がきた、と言わんばかりに瞬時に解散。散り散りになってしまう。彼はしょんぼりしている。もし、今の彼の距離まで私や子供が近付いたとしても逃げられないだろうが、彼が少しでも近付くと猫達は一目散に駈け出してしまう。彼はとことん猫に嫌われているようだ。猫を瓶詰めにでもしたのだろうか。

不思議な人その5、鏡を持ち歩く人。その人は度々街に出ると見掛けるのだが、私が見掛ける時は必ずといっていいほど鏡を持ち歩いていた。それも、手鏡とかそんな小さいものではなくて、抱えるくらい大きい鏡だ。初めて見た時は思わず2度見した。しかし、彼は慣れているのか特に気にも留めずに歩いて行く。今日も彼は鏡を持ち歩いている。どうして鏡を持ち歩かなければならないのか謎であるが、それで迷惑を被ったことはないので、今日も私は彼を2度見するのだった。

不思議な人その6,7、健気な若者と派手なスーツの人。パイナップルを連想させる髪型の人は、杖をついて歩く、派手なスーツのおじいさんの手を握り、背中を支え、転ばないように誘導している。どうやって持っているのか分からないが、まるで吊り下げるようにして荷物も持ってやっている。今時の若者であると言うのに感心だ。私も見習わねば。おじいさんはといえば、皺だらけで曲がった腰であるにも関わらず、派手なスーツがなんともミスマッチだ。色気でも演出しているのか、胸元が大きくはだけている服装はその歳では頂けない。多分あと50歳くらい若かったら許容範囲だろう。二人はゆっくりとレンタルビデオ屋へと入って行った。そういえば、今日はDVDがシニアの人は1本無料だったっけ。おじいさんいいなぁ。

不思議な人8,9、恋人同士らしき人。これはもう不思議というか、ただの…。二人はいつも一緒にいた。ベタベタくっついて、まるで付き合いたてのカップルのよう。たまに人目も気にせず熱烈なキスをしている。キスをするだけなら他のカップルも見掛けたりするのだが、二人はどう見ても同じ性別であった。勿論、世の中にはそういう人達もいるし、人の恋愛に口を出すつもりなど毛頭ない。お好きにどうぞという感じである。しかし、あそこまで堂々と開き直っている人を見るのは初めてで、ある意味で感心してしまった。その潔さに負けて、最近では二人が幸せになれるように願う自分がいる。泣けるぜ。



「面白いよねぇ。ここら辺の人達。」



バールの片隅で、向かいに座る友人に長々と語った後、少しばかり温くなったコーヒーに口をつける。外は快晴で雲一つない。呑気に話のネタにされているあの人達も、こんな快晴だ。私の知らぬところで奇行に走っているのだろう。つまらなそうに肘をついて話を聞いていた友人は何とも微妙な表情をしている。そして、当たり前と言わんばかりに



「そんな人達見掛けたことないけど。」



なんて言うのだ。



―――
【補足】
ギアッチョ→ホワイトアルバムで滑走
メローネ→ベイビィ・フェイスに教育中
リゾット→見られてるの分かっててメタリカで姿を消す
ホルマジオ→瓶詰して以来、他の猫にも嫌われて近寄れない
イルーゾォ→任務のために鏡持ち歩いてるだけ
ペッシとプロシュート→荷物をビーチ・ボーイで釣ってる、シニア扱い万歳
ソルベとジェラート→いろいろ未知のため捏造。


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