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暗チんとこのお嬢さん(中)


→少し成長した夢主



「兄貴。お願いがある。」
「あ?ンだよ、改まって。」
「お菓子の作り方教えて。」



任務に行く時のような真剣な表情をした名前が、ソファーで新聞を広げるプロシュートに声を掛けた。プロシュートは何だ何だと新聞を畳んでテーブルの上におき、名前に向き直ったのだが、思わず吸っていた煙草を落としそうになった。勿論そんなへまはせずに、眉間に皺を寄せる程度で収めたが。



「お菓子ィ?なんで俺がそんなこと。」
「ジェラートが自分達以外なら兄貴が一番上手って言ってたから。」



余計なことを、ごちるが名前は尚も真剣だ。確かにプロシュートは料理もお菓子作りも人並みに出来る。逆にいえば、チームのメンバーががさつ過ぎて出来なさ過ぎる。しかし、なぜ自分なのか。ソルベとジェラートが教えてやればいいではないか。尤もな疑問を思い浮かべたところで、名前が間髪入れずに理由を告げる。



「いつになっても二人と休日が合わない。」



プロシュートは吸っていた煙草を灰皿に押し当て、物陰で楽しそうにしているメローネを引き摺り出した。



「いてて…。話は聞いたよ!名前。俺も手伝ってやろうじゃあないか。」
「お前は手を出すな。で?何が作りてェんだ?」
「簡単な物。」
「もっと具体的に。」
「え?うーん……。」



食べ物を食べたり買ったりするのは好きなようだが、自分で作るとなるとからっきしらしい。何か作りたい物でもあるのかと思いきや、悩み出す始末。それこそ、この場にソルベとジェラートの二人がいればアドバイスでもしてくれそうだが、生憎と二人はいないし、アドバイス出来る程自分にも経験がある訳ではない。しかしだ、そんな時の為の変態である。



「おい、メローネ。お前のそのパソコンで適当に検索掛けろ。」
「ん?あァ、任せてくれ!」
「簡単なのだよ、メローネ。」



名前がメローネのパソコンを覗き込む。黙っていれば容姿は似ていなくとも、二人は仲の良い兄弟にでも見えるかもしれない。そうして納得のいくレシピを見付けた名前を連れてキッチンへと足を運んだ。



「便利だよな、クックパ「まァ、ジェラートくれェならお前でも簡単だろ。俺は手を出さねェからな。」」
「うん。」



メローネからパソコンをふんだくって材料を揃えた。卵黄、砂糖、コーヒーの粉末、牛乳、生クリーム。用意してはたと気が付く。



「お前、コーヒーなんかにしていいのか?カフェオレしか飲まねェくせして。一丁前に背伸びしてんのか?」
「そういうんじゃない。いいの、これで。」



眉間に皺を寄せた名前がプロシュートを睨む。隠し事か?と一瞬考えもしたが、名前もそれなりに成長した。自分にとってはまだまだ小さい子供であり、その差が埋まることはないのだが、それでも思春期を迎えて隠し事や反抗期を迎えるものだ。変な母性のような父性が過りながらも、それ以上深追いするのは止めた。

***

時折パソコンを見つつ、怪我をしないか、失敗をしないか見つつジェラートの完成を見届けた。何だかんだ、料理番組や料理雑誌を見ることも好きな名前は初めてであるにも関わらず、そこそこスムーズに完成させることに成功した。



「Buono!初めてなのに美味いじゃあないか!」
「おお、本当だ。中々うめェぞ。」
「お店とは違うね。」



冷えたジェラートを放り込めば、確かにそこそこな味だった。店のように、とは流石にいかないまでも、料理もしたことなかったガキにしては上出来だ。本人はまだ納得していないようだが、終始見守っていたプロシュートとメローネにしては正直食えるものが出来ただけで十分だった。嬉しそうに食べる二人を見ながら名前は半分ほど手をつけたところでハッ我に返る。そして、ジェラートの皿を手にバタバタと階段を駆け上がって行った。残された二人は何だ何だと名前の後を追う。



「リーダー。」



名前はといえば、急いでリゾットの部屋にノックをする。声まで掛けて、そわそわとしていれば、珍しくドアが開けられた。いつもは許可の声だけなのに。首を上げてリゾットを見上げると、書類の束を持って不思議そうに名前のことを見降ろしていた。そんな二人を見詰めるプロシュートとメローネはさながら不審者だろう。



「どうかしたか?」
「ジェラート、作った、から、た、食べて。ちょっとしか、ないけど……。」



照れ臭そうに差し出されたジェラートにリゾットは目を丸くする。しかし、折角の申し出を断ることなどする筈もなく、名前の手から皿を取り上げ、その頭に手をおいた。



「ありがとう。」



どうやら突然お菓子を作りたいなどと言い出したのはリゾットに食べさせるためだったらしい。嬉しそうに微笑みリゾットに照れ臭そうに笑う名前。そんな親子のようなやり取りに、影から覗く二人は何とも言えない感情が込み上げて来ていた。



「リーダーってさ、何だかんだいつもおいしいところ持っていくよな。」
「……リゾット離れさせるか。」



―――
この人達絶対暗殺してない。


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