jojo | ナノ




暗チんとこのお嬢さん(小)


→ボスはジョルノ、暗チ生存ルート、ボスは多分レクイエムされてるけど生きてる
→時間軸とかいろいろごっちゃごちゃ



名前は給料のほとんどを食べ物に費やす。貰った当初は使い道に困りひたすら溜めていたくらいだから、進歩といったら進歩かもしれない。しかし、本人にとって多過ぎる給料は溜まる一方で出ることがあまりない。ギアッチョのように物を壊すこともなければメローネのように無駄な物を買うこともない。プロシュートのように身だしなみに気をつけるわけでもないし、イルーゾォのように趣味がある訳でもない。


「皆の、買ってきた。」
「グラッツェ!名前!」
「兄貴ーッ!名前がケーキ買って来てくれましたよ!」
「あぁ?また甘い物かよ!」
「なに言ってんだ。お前実は甘い物好きのくせしてよォー。」



非番の名前がチームに何かを買ってくることは珍しくない。今の彼女にとって、給料の使い道は自分に美味しいものを買うか、皆に美味しいものを買うかの二択なのである。だからこそ、名前には言わないが、チームの全員が名前の非番を密かに楽しみにしているのである。今日はたっぷりの生クリームに苺が控えめに乗っているホールのショートケーキだった。真っ先に名前の声を聞き付けたメローネが抱き着こうとするそれを避けて名前は大事そうにショートケーキの入っている箱を置いた。リビングにいたペッシは嬉しそうに名前の頭を撫でてプロシュートを呼びに行く。丁度リビングに来たギアッチョは文句を言いながら、ソファーに座るホルマジオにあげ足をとられていた。名前はいそいそと台所へ向かい、包丁を取り出してから少しばかり火で炙る。それが終えれば、急いでリビングに戻り、予め箱から取り出しておいたケーキを素早く人数分切り分けた。



「ホルマジオ、コーヒー。」
「ん?おお、そうだな。」
「ギアッチョ、ケーキ分けたからお皿にのせて。」
「ああ?ったく、めんどくせェーなァ。」
「イルーゾォ、出て来て。ケーキ買ってきた。」
「ケーキ?」



それぞれに指示を出してから、名前は自室に籠っているであろうリゾットを呼びに走った。余談だが、名前はこんな時にしか他の者に指示を出したりしない。普段は最年少らしく、皆の指示に従っている。階段を駆け上り、とんとんと軽くノックする。声が聞こえてから控えめにドアノブを回すと、案の定、リゾットは自室で仕事をしているようだった。



「ケーキ買ってきた。皆で食べよう?」
「ああ、もうそんな時間か。今行く。」



部屋にかかっている時計をちらりと見たリゾットの答えを聞いてから名前は再び階段を駆け下りてリビングに戻る。リゾット以外は全員揃ってるようで、それぞれが思い思いの場所に座りながらケーキを貪っていた。チームの皆が密かに名前の非番を楽しみにしているように、名前も強面の男達がケーキを貪る姿は何ともシュールだと密かに面白がっているのだった。顔には出さないが。今日は見ていないソルベとジェラートの分にラップをかけて冷蔵庫に入れると、名前も床に座ってケーキに手を掛ける。ちょうどリゾットもリビングに来たところだ。



「しっかし名前が選んでくる店のは外れがねェなァ。」
「日本人なのに何で俺達より美味い店知ってんだ?」
「……友達に教えてもらうから。」
「え?名前友達なんていたの?」



ホルマジオとイルーゾォがケーキを貪りながら関心しているような声をあげる。気分の悪いものではないと思いながら、名前が言うと、メローネが何とも失礼極まりないことを言うので自然と眉間に皺が寄った。悪い、なんて言いながら欠片も悪いと思っていない笑顔に名前はぷいっと視線をケーキに戻した。



「いや、でもマジな話。お前ここに来て日が浅いだろ?知り合いなんて俺達くらいしかいないと思ってたからさ。」
「友達かァ。良かったね、名前。」



メローネの言うことは確かに尤もだった。誰しもが自分達以外に知り合いなどいないと思っていた名前にいつの間にか出来た友達。ペッシ以外は全員が妙な勘ぐりを始めていた。その空気に気付かない名前ではないが、いちいちプライベートにまで口を出されたくない。余計なことを言ってしまったと思いながらも、黙ってやり過ごそうとした。プロシュートが余計なことを言うまでは。



「名前言ってみろよ。仕事が仕事だ。一般人である保証はねェぞ。」
「……悪い人じゃない。」
「それはお前が判断することじゃねェ。いいから言ってみろ。」
「………。」



流石はプロシュート!皆が心の中でプロシュートを褒め称える中で名前だけは面倒臭そうに溜め息を吐いた。本当に悪い人じゃない。何度か会っていて分かることだ。しかし、プロシュートの言うことは間違っていない。名前にはプロシュートの言葉が、自分達の仕事上、友達が危ない目に遭うかもしれないと言われた気がした。交流を断つべきだろうか。それにしたって急にしては怪しまれる。それに折角出来た友達だ。なるべくなら、そんなことはしたくない。皆に言えば、いざとなったら守ってもらえるかもしれない。名前は意を決して友達の名前を口にした。



「…ナランチャ。」
「……あ?」
「だから、友達の名前。ナランチャ。」
「ナランチャ、だと?」
「……名前、ナランチャとは、ナランチャ・ギルガのことか?」
「え?うん。リーダー知ってるの?」
「………。」



全員が無言。プロシュートに至っては感情を押し殺そうとして震えている。名前はまさかの反応に嬉しく思いながらも、訳の分からない反応をする全員にクエスチョンマークがひたすら浮かぶ。そんな中、まるで振り絞るかのようにホルマジオが声をあげた。



「ま、まァ、確かに悪い奴じゃあねェな。」
「いや、悪い奴だろ…。」
「んなこと言ったら俺等だってそうだろうがよ…。」
「あ、そうか…。」



イルーゾォがホルマジオのあげ足をとり、更にギアッチョがイルーゾォのあげ足をとる。相変わらず微妙な空気のままだが、皆の知り合い且つ、悪い奴じゃない認定をされて少しばかり名前はご機嫌だった。やはり友達のことを悪く言われるのは腹が立つ。逆であれば嬉しいものだ。小さく切り分けたケーキを口に放り込みながら自分用に甘く入れてもらったカフェオレに口をつけた。



「名前よォ、まさかこのケーキはそのナランチャと買いに行ったってのか?」
「兄貴、スタンドが……」
「いいから答えろ。」
「ケーキは違う。ケーキはジョルノ。」



ガタガタと皆が勢いよく立ち上がった。その音に驚いて名前は目を見開く。珍しく名前の感情が表に出たのだが、今はそれどころではなかった。まさかこの流れで名前の口から、そんな名前が出るとは誰も思っていなかったからだ。いつもは動じないプロシュートや笑い飛ばすメローネまでもが立ち上がっている。しかし、一番に冷静さを取り戻したのは流石だろう。チームのリーダーであるリゾットが名前の側にしゃがみ込み、肩に手を置いた。



「お前も知っているだろう。組織のボスの名前を。」
「知ってる。ジョルノ。」
「そうだ。お前の友達は偶然同じ名前なのか?それとも…。」



皆が前者であって欲しいと願った。名前の友達がナランチャであると聞いた瞬間、プロシュートは可愛い妹分を誑かしやがって、と暗殺の計画を立てていた程だ。それが我らがボスであるジョルノだったらどうするのか。否、どうしたらいいのか。手を出すなとも、縁を切れとも言えない。そもそも、なぜボスであるジョルノと友達などという関係になっているのかが甚だ疑問である。そうだ、おかしい。組織に入っている以上、そんな関係などありえない。皆が自分にそう言い聞かせ、途中まで聞いてくれたリーダーに感謝していた。しかし



「ジョルノはボスのジョルノだよ。でも、友達。ジョルノが、友達でいようって言ってくれたから。敬語もいらないって。一緒にご飯食べに行って、遊びたいからって。だから、ジョルノは名前の友達。悪い人じゃないでしょ?」



悪い人だろ!全員が喉まで出掛けた言葉を飲み込んだ。ふらふらと項垂れるようにソファーに座るホルマジオとイルーゾォ、そしてギアッチョにメローネ。持ってきた椅子に深く腰掛けるプロシュート。名前の隣で床に腰をおろしたペッシ。肩に手を置いたままがっくりと項垂れるリゾット。ケーキが食べにくいと思う名前。項垂れるのは、皆ジョルノには頭が上がらないからだ。仕事が仕事である。一般人では簡単に餌食にされるのではないかと心配したが、意外な名前のお友達にその心配はほぼいらないだろうと安堵した。名前が友達をなくして悲しむ姿は、なるべくなら見たくない。しかし、名前にいらないことまで吹き込みそうで心配ではある。項垂れるチームの面々を眺めながら、親の心子知らずと言わんばかりに名前は面白がっているのだった。



(じゃあ、出掛けてくる)
(今日はどっちだ!?いや、誰だ!?)
(兄貴…。気持ちは分かるけど、落ち着いて……)
(今日はブチャラティ)
(!?)


[戻る]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -