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シーザーとドライヤー/現パロ


お風呂からあがっても、髪は乾かさない。面倒だからとか名前がずぼらだからとか、そういうことではない。これにはちゃんと理由がある。軽くタオルで髪を拭いて、私は軽い足取りである扉をノックした。



「シーザーいる?」
「ん?あぁ。」



部屋の主は私の声を聞くと直ぐに扉を開けてくれた。少しばかり呆れたような表情をした部屋の主、シーザーのことは無視して部屋の中に入る。ベッドに敷かれたシーツは、私が今日洗濯をしたものだ。何となく触り心地が良いし綺麗な感じがする。そこに座って自分の隣をベッドで叩き、座るよう促す。シーザーは苦笑いをしながらも、ちゃんとそこに座ってくれる。



「全く、お前も困った奴だ。」
「早くー!」



持ってきたドライヤーを手渡してシーザーに対して後ろを向いた。一度だけ、髪を乾かす暇もなく疲れて眠ってしまった時があった。翌日しっかり風邪を引いてしまってシーザーに怒られた。そんなことがあってから別の日に、ちょっと用事があって髪を濡らしたまま廊下を歩いていたらシーザーに怒られ、引き摺られるままに部屋に連れ込まれた。何事かと驚く私を無視してシーザーはお説教をしながら私の髪を乾かしてくれた。文句を言いながらも面倒見のいい彼は時折、髪に指を通しながら時間を掛けて髪を乾かしてくれる。それからというもの、どうにも癖になってしまって、こうしてシーザーに髪を乾かしてもらっている。何時だったか、子供みたいだと笑われてしまったけれど。



「折角のシニョリーナの申し出を断る訳にはいかないな。」
「シーザーのそういうところは好きだよ。」
「俺の嫌なところでもあるのかい?」
「すぐ浮気するところ。」
「…俺が愛してるのは勿論名前だけさ。そんなの君も分かってるだろ?こうして健気に君の髪を乾かすのも、キスするのも。」



顎を掴んで振り向かせると、そのまま触れるだけのキスをする。これだからキザな男はと思うのに、頬が赤くなってしまう自分も大概だと思う。惚れた弱みか何なのか、結局のところ私はシーザーに甘い。何度浮気をされたって、君だけだなんて安っぽい愛の囁き一つで全て許してしまうのだから。照れを隠す為にすぐにそっぽを向いた。



「早く!風邪ひいちゃう!」
「分かってるよ、俺の可愛い人。」



またそういうことを。小さく呟いた言葉はドライヤーの音で掻き消された。



―――
精一杯の甘い囁き…。


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