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4部太郎と夫婦


論文がいまいち進まない。書くこともまとまらない。だが、期限はすぐそこまで迫っている。研究室から眺める空は晴れ渡っている。このまま全てを放り投げてしまいたい。気付けば灰皿が煙草の吸殻だらけになっていた。

***

「あれ?お帰り。早かったね。」



資料をまとめて、パソコンを鞄に押し込み研究室から抜け出した。一歩外に出れば、室内で見ていた空よりもずっと綺麗で心地が良かった。勉強や研究が特別に嫌いな訳ではない。ただ、論文の締めきり期限が近付くと、土日返上で研究室に籠らなければならないというものは少しばかり億劫である。そんな俺の生活に妻は文句の一つも言わずに送り出してくれる。新婚であるにも関わらず、あまり構ってやることも出来ない。直接言葉にしたことはないが、そんな俺に愛想を尽かさず、こうして一緒に居てくれていることに感謝してる。


「論文終わりそう?」
「………。」
「あらら。まぁ、気分転換も必要だから。」



すっかり図星をつかれて俺は帽子を深く被り直した。目の端には妻の苦笑いをしている顔が見える。しかし、次の瞬間にはいつも通り家事に戻っていた。洗濯の途中だったようで、テキパキとした動作で洗濯物やバスタオルが干されていく。論文を進めなければならないという重要項目はあるものの、今日はもう止めた。することもないからと、側まで寄って、洗濯をする妻の様子でも眺めていようと思ったが、自分とは正反対に進む作業が何となく恨めしく、後ろから抱き締めて作業を中断してやった。



「ちょっと。承太郎さーん、邪魔ですよー。」
「おう。」
「おうって……。洗濯が終わらないんですけど。」
「おう。」



首筋に顔を埋めると、まるで子供をあやすように頭を撫でる。すぐ近くでくすくす笑う声が聞こえた。


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