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ディオが夕飯を作ってくれる


バイトで帰りが遅くなる。何時もならご飯を作っておくんだけど、ディオが何を思ったのか夕飯を作ると言ってくれたからお言葉に甘えた。今まで一度もご飯を作ってくれたことなんてなかったから、ずっと作れないものだと思っていたけど、名前の思い込みかもしれない。初めてディオがご飯を作ってくれるということで、バイトからサッサと退散して足早に帰宅した。ご飯を作ってくれるだけでこんなに嬉しいなんて名前も大概単純だ。



「ただいまー!」



嬉々としながら帰ると、名前が中学生の頃に作ったエプロンを身につけて複雑そうな表情をしながらお出迎えをしてくれた。普段は名前が身につけているエプロンだけれど、ディオが身につけていると、普段の大人っぽさと妙に気品の漂う雰囲気とのギャップで笑いそうになる。



「おかえり。悪いがコンビニでも行って弁当を買ってこい。」
「ディオが作ってくれたんじゃないの?」
「………。」



なぜか眉間に皺を寄せて余計に複雑そうな表情をする。首を傾げてディオのことを見詰めていれば、罰が悪そうに台所に向かってしまった。名前も急いで後を追えば、ディオがコンロの前に佇んでいた。



「どうし……」



大きめの深い鍋を使っているから、カレーとかシチューとか、そういう簡単なものだろうと思って覗き込んだら、そこにはブラックホールが広がっていた。思わず固まってしまう程に黒い。焦げなのか、それとも材料のせいで黒いのか、よく分からないけど黒い。冷や汗を流しながらディオの方にチラリと視線をやれば、相変わらず眉間に皺を寄せていた。



「シチューを作ろうと思ったんだがな、出来たらこんな状態だった。」
「シチュー!?」
「レシピどおりに作っていたというのに、どういうことだ?」



心底訳が分からないという表情をしているが、名前の方が訳が分からない。シチューって普通白い筈なのに何を間違えたらこんな真っ黒になるか。勿論、そんなことは口にはしない。しかし、やはりまだ子供のディオに一人で料理をさせるのは早かったのかもしれない。果たしてこの黒い塊をどうしたものかと考えていれば、ディオが小さな声でぽつりと呟いた。



「家庭科の授業で作った時は大丈夫だった筈なのにな…。」



完全に試されている。この黒い塊を食べることによって幼いディオの心は料理の失敗という精神的ダメージが緩和され、次に生かされるだろう。しかし、これを食べきる自信がない。例え食べきれたとして、お腹が暴走することは目に見えている。ダラダラ嫌な汗が背中を伝っているのが分かる。



「承太郎達と作った時は上手く出来た筈なんだが…。」
「味は悪くないよ。ただ煮詰め過ぎちゃったんだね。今度一緒に作ろう?」



お玉から黒い塊をすくって口の中に放り込んだ。材料が溶け合っていて口の中で爆発しているお陰で味は正直よく分からない。なんとか飲み込んでみたものの、多分これ以上は無理だ。引きつった笑顔を張り付けてディオの頭を撫でていれば目を見開いて驚いていた。名前も自分の行動に驚いてるよ。何時もなら手を振り払って反抗するディオだけど、今は大人しくされるがままで俯いている。こんなしおらしいディオが見れるなら頑張った甲斐があるってものだ。



「…君がそんなに言うなら作ってやっても良い。」



照れくさそうに吐き捨てたディオが可愛くて思わず抱き締めた。



(しかし、あんなものよく食べたな。僕なら絶対に食べない)
(えぇ!?)



―――
ディオに家庭科の授業って言わせたかった。


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