sbms | ナノ
制服サブマス2

「くっそー……。」



私の上司の嫌なところは頑固故に口にしたことはほとんどの確率で実行してしまうところだ。そういう訳で本当に制服を作ってしまったのである。カミツレさんには私が電話した通り断られたので自分たちで作ったんだとか。そんな暇あるなら仕事しろと言ってやりたいが、これまた仕事もちゃんとこなすから、言うに言えなくて余計腹立たしい。
上司が作った制服を簡単に説明するとノボリさんのは黒なのだが、如何せんスカートが短い。制服か疑う程に短い。どこの風俗だよ!と突っ込みを入れてやりたい。クダリさんのは勿論白。スラックスも一応あるようだが、まるでホストにでもなった気分だった。



「はぁ…。」



促されるまま試着してみたはいいものの、どっちも好みじゃない。なにより自分だけが他の鉄道員と違う制服だなんて疎外感を感じてしまう。そんな私のことなど知りもしないでこんな制服を作りおって上司め!律儀に新しいワイシャツまで用意してもらったが、全て脱いで元の制服に着替えよう。
スーツを脱ぎハンガーにかけている時、ふと鏡に映る自分の姿。



「(………太った、かな?)」



お腹周りに太腿、鏡に映る自分の姿と睨めっこ。この前友達とバイキングに行ったから?それともこの前の飲み会で?それともこの前の夜食が……。思い当たる節があり過ぎて思わず項垂れた。そういえば心なしかスーツもきつかったような気もする。そんな健康過ぎる体とは反対に目の下には隈が出来ていて、ここ何日か続く夜勤の悲惨さを物語っていた。ああ、でも今日はこんな訳の分からないスーツの試着で終わりだ。ノボリさんとクダリさんにスーツを押し付けて早く帰ろう。



「名前ー!終わったー?」
「ぎゃあああ!なに開けてんですか!」



項垂れている暇などなかった。返事も聞かずに更衣室に入って来たのは言わずもがな上司である。慌ててそこら辺に転がっていたスーツを引っ掴んでだらしない体を隠した。ロッカーを背にして逃げるように隅っこに縮こまる。にんまりと楽しそうに笑うクダリさんは気にする様子もなく私の目の前まで高級そうな靴の音を鳴らしながら歩み寄ってくる。し、しまった!逃げ場が!



「なんでノボリのスーツ掴んでるの?ぼくの気に入らなかった?」
「クダリさんが急に入ってくるから咄嗟に掴んだんですよ!いいから出てって下さい!まだ着替え終わってないんで!」
「ぼくの選んでくれるよね?」
「いえ、だからスーツは今のままでいいんですって!」
「だめ。名前女の子。スカートじゃなきゃだめ。」
「男女共同!」
「ぼくの選ぶって言うまでぼく出ていかなーい!」



ぷいっと顔を逸らし、子供の様な拗ね方にほとほと呆れてしまう。まだまだ肌寒い季節で、更衣室など暖房も効かない場所でこんな下着だけの格好なんて、新手の苛めかなにかだろうか。鳥肌はたつし、クダリさんはじっとこっちを見てきて恥ずかしい。これ以上後ろには下がれないのに悪あがきをするように背中をロッカーにぴったりとくっつけた。



「名前白い。」
「は?」
「肌白いね。」
「え?あ、ああ。いえ、それならクダリさんの方が白いですよ。」
「そんなことない!それに名前の肌綺麗。」
「いやいやいや、そんなことって、触るな!」



肌が白いことが褒め言葉になるかどうかはおいておいても、綺麗と言われればそれなりに嬉しい。しかし、照れてちょっと油断した隙にクダリさんの手袋越しの手が私の足をするするとなぞるから台無しだ。思いっ切り叩き落とせば、痛いと言いながら恨めしそうに私を睨みつけてくる。油断も隙もない。暫く睨み合いを続けていると視界の隅に見えた黒いロングコート。



「な、なにをしているのですか!貴方達は!」
「ノボリさん!貴方の弟さんどうにかして下さい!」
「わたくしも仲間にいれて下さいまし!」
「はあ!?」



ばさばさと床に散らばるノボリさんの書類達。いいのか、そんな扱いをして。私の心配を余所にノボリさんはきらきらと目を輝かせながら走って来た。ここが女子更衣室であることなど、どうやらこの上司二人には関係ないらしい。。



「えー、やだ。ぼく普通に名前とだけがいい。ノボリうるさい。」
「わたくしはクダリと名前様と3Pがしたいのでございます!」
「!?」



目の前で上司達が何事もなさそうに口論を続けている。しかし、今とんでもない言葉が聞こえた。気のせいと思いたいが、生憎この上司達の頭の中は年中無休でピンクなので今すぐにでもここから逃げ出さないとまずい。私の貞操の危機が…!



「名前って処女なの?」
「声が大きい!心読まないで下さい!」
「ブラボー!わたくし達が優しくお教え致します!」
「嫌です嫌です結構です!」
「そうだよね。ぼくも名前と二人っきりがいい。ノボリってばいちいち喘いでうるさいんだから。」
「上司のそんな事情知りたくない!」
「名前様にはわたくしのことを余すところなく知り尽くして頂きたいのです。」
「なに赤くなってんですか!」



凄く聞きたくなかった上司の性事情を聞かされた上に私はまだ下着姿のまま。これはセクハラで訴えても勝てる自信がある。未だ頬を染め、恥ずかしそうにそわそわするノボリさんに、名前とノボリと3Pかぁ、など危ない方向に走ろうとしているクダリさん。本気でまずいと冷や汗が流れ始めた頃、赤い光が目の前を照らす。



「……オノノクス?」



目の前に立ったのは今まで何人もの廃人を泣かせてきたノボリさんの6Vオノノクス。顔だけをこちらに向け、心配そうな瞳を向けてくれている。いやに私に懐いてくれているとは思っていたが、まさかこんなピンチから私を守ってくれるなんて!



「なんて良い子!」
「オノノクス!なにをしているのですか!そこを退きなさい!」
「ノボリのオノノクス、ノボリに似て名前に懐き過ぎ!」



わあわあ騒ぐ上司二人を問答無用でを追い出し、そのまま自分も出て行く紳士なオノノクスを上司二人にも見習えと言ってやりたい。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -