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ノボリとにょだり

→クダリが女体化
→百合
→付き合ってる前提だよ!



「クダリさん、あんまりくっつかれると……」
「恥ずかしい?大丈夫!ぼくとノボリしかいないから!」
「そうでございます!わたくしのことはお気になさらず!空気だと思って!」
「いえ、そういう訳には……」



どうしてこうなったと言わざるを得ない。ノックをしてクダリさんの執務室を訪ねれば、部屋に入ると同時に抱き着かれたのである。こうして急に呼ばれてしまうことも慣れたし、抱き着かれることも慣れたものだ。ぎゅうぎゅうと抱き着く力に入れられて苦しい。なるべく体を引き離そうと押し返せば、少しむくれた表情になって更に力を込めてくるので逆効果である。



「うー、名前なんで離れようとするの?それに最近冷たい。」
「単純に苦しいだけです。別に冷たくしてるつもりもないんですが……。」
「冷たい!ぼく寂しい!ちゅーしていい?」
「駄目ですけど?」
「ほらぁ!」



ぐずり始めたクダリさんを尻目に、気付かれないように溜め息を吐いた。いくら私達の関係をノボリさんに話してあるといえど、目の前でキスをするなんて言語道断だ。ノボリさんだって呆れてるに違いない。いつもみたいに困った表情ですみませんとか、そういうに決まっ「わたくしのことはお気になさらず!さぁ!」



「え?」
「遠慮せずに!今わたくしは空気でございます。この空間にいるのはお二人のみ!さぁ!いつものようにキスでもなんでもして下さいまし!」
「ノボリさん!?」



クダリさん越しに見えたノボリさんは、ギラギラとした瞳を向けていた。まるで肉食獣である。そんな瞳で尚も、さぁ!と急かすノボリさんに混乱していると、クダリさんがにんまり笑顔で顔を近付けて



「んんっ!ん、っ!」
「ん、はっ、んぅ…」
「はぁはぁ、スーパーブラボーでございます!名前様!クダリ!」



気付いた頃には唇が重なっていて、キスをしているのだと自覚した頃には口内に舌が侵入していた。後ろでノボリさんが息遣いを荒くして、なにか叫んでいるようだが、なにも入ってこない。何度も角度を変え貪るようにキスをされると、段々体の力が抜けていくようで、クダリさんに縋りついて、必死になって舌を絡めた。なんだかんだ言いながら、私だって寂しかったし、出来ることなら、こうしてクダリさんに触れたいと思っていた訳で……。まぁ、二人っきりでの話しだけれど。



「んぁ、クダっ、んん!」
「名前…んっ!」



キスに没頭していたせいだろうか。くらくらする頭は熱に浮かされて、最早周りの音が聞こえなくなってしまったのかもしれない。その証拠に、うるさかったノボリさんの声が一切聞こえなくなったのである。もしかしたら、空気を読んで出ていったのかもしれない。そんな想像に少しだけ安心して、私からも求める様にキスに応える。角度を変えてキスをしては舌を絡めて、溢れる唾液はどちらのものともつかず、口元を伝う。舌を軽く吸ったり、唇を舐めたり。その度に、ぴちゃぴちゃとうるさい水音が部屋に響いた。そうしていれば、いい加減苦しくなって、お互いに顔を離すと、そこにはすっかり欲情しきったクダリさんがいた。それは私も同じかもしれないけれど。



「ねぇ……シよ?」
「あの、でも、まだお仕事が残って…」
「ぼくも手伝うから、ね?」



じいっと見詰めてくる瞳に欲が孕まれていることなど百も承知で、そんなクダリさんの誘いを断れないって知ってて聞いてくるんだから、クダリさんはずるい。私だってクダリさんに触りたいし触ってほしいんだから!なんて、口が裂けてもいえないけれど。返事に答えあぐねていると、ぎゅうっと抱き着いて、わざとらしく胸を押し付けてくる。女の私が思うのもなんだけど、凄く大きいし柔らかいしで、胸というものを、とてもよく表現できていると思う。



「クダリさ「ブラボー!スーパーブラボーですクダリ!もっと胸を名前様にくっつけてくださいまし!」」



それまで、なんだかちょっと怪しい雰囲気を醸し出していた空間が一気に的外れの方向に飛んで行った気がした。声の主は私とクダリさんの横でカメラを構えながら息遣いを荒げて、パシャパシャと写真を撮っていた。眩しいしうるさい。



「……ノボリ、空気読んで。」
「なにを仰います!この溢れんばかりの思いをわたくしの胸のうちに秘めておくには少々、いえ、だいぶ容量が足りません!」
「あのね、ぼく達の関係を応援してくれるのは嬉しいんだけど、その趣味に付き合うのは嫌。」
「趣味?」



流石のクダリさんも、いろいろと意識が削がれてしまったらしく、恨みがましくノボリさんを睨み付けていた。安心感半分、残念な気持ち半分で私も複雑だ。しかし、そんな私達のことなど知らないと言わんばかりに、ノボリさんは写真を撮り続けている。うるさい。



「ごめんね、名前。ノボリ、女の子同士の恋愛が好きなんだって。」
「は?はぁ……珍しい、ですね。」
「うん。だから、ぼくが報告した時も凄く喜んでくれた。でもね、写真撮らせてとか、凄くうるさい。」



むすっと不機嫌を露わにしたクダリさんがカメラとは反対側に顔を反らした。そんな表情も可愛いな、なんて思って破顔させていたが、それどころではなかった。確かにうるさい。いちいち、ブラボーだとか叫ばれながら写真撮られては、なんだか落ち着かない。それに、もし、もし先程までの写真が撮られているとしたら、削除してもらわなければ恥ずかしさで爆発する。



「あの、ノボリさん、さっきの写真、撮ってない、ですよね?」
「先程の、と言いますと、ディープキスのことでございますか?」
「えっ!あ、えっと、あの………そう、ですが……。」



なんだろう、この羞恥プレイは。俯き小さくなる声と、しどろもどろに答えたせいでノボリさんに聞こえたのか少し不安だが、あんなストレートに言われて顔なんて上げられない。しっかり見られてるじゃないか!ノボリさんが至って普段通りの声音であることが、唯一の救いかもしれない。これでノボリさんまで恥ずかしがってたら、きっとこの空間から逃げ出したに違いない。



「撮っていませんよ。」
「! そうですか。」



恐る恐るだったために嬉しくなって思わず顔を上げてしまった。サッと目だけは合わせまいと逸らしたが、ひとまずこれで一安心だ。ほっと胸を撫で下ろしていると、普段絶対に見ることの出来ない、ノボリさんの満面の笑みを見た。



「動画で録らせて頂きました!」
「は!?」
「ちょっとノボリ!そんなの聞いてない!」



これにはクダリさんも憤慨らしい。勢い良くノボリさんを押し倒して胸倉に掴みかかった。今この瞬間にも喧嘩を始めてしまいそうな二人に、止めに入るべきかどうか迷いあぐねて、おろおろしているとクダリさんが



「その動画ぼくにも頂戴!」



とんでもないことを言うものだから、ああ、やっぱり兄妹なんだな、って妙に納得してしまった。違う、そうじゃない。



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