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にょだりちゃん

→クダリが女体化



寂しいから、お願い。
そんなことを涙目の上目遣いに、胸を押し付けられ、更に服をぎゅっと掴まれてしまえば誰が断るものか。はいと元気良く二つ返事をして、私はクダリさんに連れられるまま、彼女のマンションまでホイホイついて行ってしまった訳だ。クダリさんは終始テンションが高くて、一緒にご飯を食べてる時もよく喋る喋る。私はクダリさんの目の前で食べ物を口から出すなど、そんな恥ずかしい失態を犯したくなかったから、いつもより口数が少なかったかもしれない。その後もコンビニに寄って、クダリさんが食べたいと言ったケーキとお酒を買い、下着も、と思ったのだがクダリさんが駄々っ子のようにぼくの貸す!の一点張りだったので諦めた。



「お酒ー!はい、どうぞ!」
「あ、ありがとうございます。」


クダリさんが持ってきてくれたグラスに更にお酒までお酌してもらって…。私部下なのに!慌てふためく私とは正反対に、クダリさんは家に帰ったことでリラックスしてるみたいで、サブウェイマスターの証であるコートもそこら辺に脱ぎ捨て、ネクタイも外し、首元なんか緩め過ぎて下着がチラッチラ見え隠れ。目のやり場に困る男性の気持ちとは正にこういうことか。



「ケーキも食べよ!」
「お酒にケーキですか。」
「変?」
「いえ、私もします。美味しいですよね。」



ぱたぱたお皿を取りに行ったであろうクダリさんを見送って、私はケーキを箱から取り出した。コンビニに行ったことがないと言っていたクダリさんが(今時本当にいたのか)二つのケーキで悩んでいたので、勿論二つ購入して半分ずつ食べることにしている。ショートケーキとフルーツケーキ。どっちも生クリームたっぷりでどこまでも白が似合う人だな、なんて思っていたらぱたぱたと案の定お皿を持ってクダリさんが私の隣にすとんと座った。あれ、こういう時って普通向かいに座るとかじゃないんですか?



「クダリさん?狭くないですか?」
「狭い。でも、名前とくっついてたい。だめ?」
「駄目じゃないです!大丈夫です!寧ろ私でいいんですか!」
「うん、名前がいい!」



ギアステの天使は今日も私の心臓をぶち抜いてくれました。呼吸すら危うくなりそうだが、彼女はあくまでも上司。私達のボス。簡単にいえば偉い人なのだから、いくらクダリさんが優しいといえど、節度を持たなければ。
ケーキをお皿に乗っけて、グラスに注がれたお酒を持ち、二人で乾杯する。私がフルーツケーキでクダリさんがショートケーキ。クダリさんが口に入れるのを見守ってから私もケーキに手を付けた。そりゃケーキ屋さんのケーキに敵う訳ではないが美味しい。しかし、クダリさんの口に合うだろうか。コンビニに行ったことがないと言っていたクダリさんはきっとケーキ屋さんのケーキしか食べたことがないんだろう。折角泊めてもらうのに、味が落ちるものを食べさせてしまって…。今更心配になってきた。お酒だって安物だし、それに下着だって私のお財布を心配してくれたんだろうし、よくよく考えれば私迷惑しかかけて「おいしい!」



「は?」
「おいしいね!ケーキもお酒も。」
「あ、そ、そうですか?」
「名前おいしくない?」
「いえ、私には十分美味しいです。」
「そっか。じゃあ、はい!」



そう言われて差し出されたのは一口大に切られたクダリさんのショートケーキ。まるで早く食べろといわんばかりに差し出してくる。



「あ、いや、後で頂きます、から。」
「いいから口開けて?はい、あーん!」



自分が石にでもなってしまったような錯覚に襲われた。多分、クダリさんが可愛過ぎて頭が完全にオーバーヒートしてる。しかし、クダリさんが口開けてくれないの?なんて眉を下げて聞いてくるから、慌てて口を開けてクダリさんからショートケーキを頂いた。異常に甘ったるくて、それなのに美味しく感じるのはクダリさんのお陰かもしれない。



「えへへ、口の横ついてる。」
「ん?」



とんとん、と口の端を指差すクダリさん。生クリームがついてしまったのかもしれない。なんてお見苦しい姿を。今すぐに拭き取ってしまおうと思ったのだが、身を乗り出して唇を寄せてきたクダリさんに驚いて再び私は固まってしまった。それをいいことに、べろんと生クリームを舐め取って、おいしい、なんて言うものだから恥ずかしさやら、クダリさんの扇情的な姿やらにがない交ぜになって顔から火が出そう…。



「名前大丈夫?顔真っ赤。熱?」
「違います…。大丈夫ですよ…。」



その後もショートケーキを気に入ったようで、クダリさんはおいしいおいしいと連呼しながら簡単にショートケーキを平らげてしまった。半分ずつとは言っていたが、クダリさんが気に入ったのならなんでもいい。なくなったショートケーキの代わりに半分残ったフルーツケーキをクダリさんに渡した。すると、クダリさんはやってしまったといった顔をして申し訳なさそうに眉を下げている。



「ご、ごめん!ぼく、忘れて全部食べちゃって……。」
「そんな顔しないで下さい。元々クダリさんの為に買ったんです。私は半分で十分ですよ。」
「名前っ!」



キラキラとした目をこちらに向けていたかと思うと、勢い良く私に抱き着いてきたじゃないか。驚いて受け身もとれず、そのまま二人で床に転がった。犬だったら絶対に尻尾をぶんぶんと振り回してる。ぐりぐりと頭を押し付けてきて嬉しさを体全体で表現するクダリさんを見たらそう思わずにはいられなかった。それにしても、この、当たる胸は、一体なにカップなんだろうか。私の貧相な体とは違い、むちむちでボンッキュッボンッなクダリさんの体系は男性はおろか、女性も魅了する程のメロメロボディーだ。



「ありがとう!大好き!」
「そ、そんな…。あ、でも、私もクダリさんのこと尊敬してます。」
「えへへ。」



クダリさんを見ていると心が癒される。というか、煩悩がすぽーんと飛んでいく気がする。再びケーキに口をつけ始めたクダリさんの様子をチラチラと窺いながら、お酒をぐいっと飲みほした。

***

「クダリさんって何カップなんですか?」



すっかり出来あがった私は何の気なしにクダリさんに日々悶々とした疑問をぶつけた。クダリさんも別になんてことないと言った風な顔で考えてるようだった。



「多分Fかな?」
「わー!大きいですね!」
「そうかな。」
「大きいですよ!触ってもいいですか?」
「うん、いいよ。」



クダリさんが胸を張るようにして突き出してくるので、それはもう遠慮なしに触らせて頂いた。指が食い込んで、手を大きく開いても零れ落ちてしまいそうだ。無言でむにむにと揉んでいると、クダリさんが私の手に自分の手を重ねてくる。なんだろうとクダリさんを見遣る。



「名前、胸も小さいけど手も小さい。」
「最初の余計です。」
「ぼくのおっぱい持ちきれないね?」



確かに私の手は小さいかもしれない。クダリさんの手を加えることでようやく彼女の胸を持てている状態だし。そんな風に暫くクダリさんに触れていたら、その暖かい体温に感化されたのか、体が重く瞼も重くなって、何度も何度も意識的に瞬きを繰り返した。



「名前眠い?」
「眠く、ないです。」
「うそ。名前寝むそう。体も暖かい。」
「眠くないですぅ。暖かいのはクダリさんです!」
「はいはい。お布団ないからぼくと同じベッドね。」
「クダリさんともっとお話してたいのー……。」



ぎゅうっと縋るように抱き着いて、その豊富な胸に顔を埋めさせてもらった。気持ち良さが半端じゃない。今にも眠ってしまいそうだが、それではいけない。折角のお泊まりなんだから、もっともっとクダリさんと仲良くなりたい。それなのに、クダリさんが寝室まで運んで、しかも一緒にベッドに入っちゃうから、何でも良くなっちゃうじゃないですか。



「クダリさんクダリさぁーん。」
「なぁに?」
「クダリさんはなんでそんなにバトル強いんですかぁ?私ももっと強くなってぇ、それで、えっと、書類もばんばんこなして、それで」



羽交い絞めでもするかのような勢いで抱き締めれば、クダリさんはくすぐったそうにふふふって身を捩って笑う。その時にふんわりと甘い香りがして、クダリさんは天使で、お菓子から出来てる妖精かなにかなんじゃないかなって、ちょっと本気で思った。



「えへへ、良かった。」
「?なにがれすかぁ?」



最早呂律も回らないし、言ったそばから自分がなにを言ったのか覚えてられない。ぎゅうぎゅう抱き締めて、クダリさんの背中をぺたぺた触る。気持ちいい。クダリさんが、あの人気者で偉い人でノボリさんの妹で、それでそれで…そんなのどうでもいいけど、クダリさんが私みたいなの邪見に扱わないで抱きしめ返してくれるし、もうなんだかそれだけで満たされる。ちゅっちゅっとリップ音をたてながらクダリさんの首筋にキスを落とす。瞼や髪にも同様に。



「んっ、名前口数少なかった。ギアステでもぼくの目見てくれない。だから嫌われてるのかなって思ってた。」
「そ!そんな訳ないじゃないですかぁ!クダリさんだいすきですー!」



私がクダリさんを嫌うなんて、そんな馬鹿げた話がある筈ない。目が見れないのは恥ずかしいから。今度は私がクダリさんみたいに頭をぐりぐり押し付けた。それをよしよし、って撫でてくれてちゅっと髪にキスが落ちる。それを合図に瞼に頬に鼻先に、至る所にキスを落とされる。



「ん、クダリさん。」
「ぼくも大好き!」
「私もすきれすぅ。ちゅー!」
「え?え?いいの?」
「はやくー!」



首に腕を回してせがめば、少し間をおいてからちゅっと軽く唇にクダリさんのが重なる。それだけじゃ満足できなくて、むっと表情を曇らせ、クダリさんに噛みつくように唇を重ねた。



「んっ!ん、名前…ん!」
「ちゅっ、ん、ん、クダリさんー……。」



薄っすらとクダリさんの照れたようなはにかんだような、普段見ることのない笑顔が見れたんだけど、あまりよく、覚えてない。



***

(消えたい)



朝起きて、隣にクダリさんが寝てて、それはもう幸せそうな顔で寝てるから思わずこっちの頬も緩んだ。違う、そうじゃない。その後、なんでこうなったのか冷静に昨夜のことを思い出してみて、分子レベルで消えたくなった。跡形もなしに消えてなくなりたい。一人項垂れていると、すき間が出来て寒かったのかもぞもぞと体を動かしたクダリさんがゆっくりと目を開けた。あああ!まだ心の準備が!その前になんて謝ったら!



「おはよー。」
「おはよう、ございます。クダリさん!あの、き、昨日はその、ご迷惑をおかけして…」
「迷惑なんかじゃないよ?楽しかった!またお泊まりしよ?」



涙目の上目遣いに、胸を押し付けられ、更に服をぎゅっと掴まれてしまえば誰が断るものか。あれ、これなんてデジャヴ?



―――
女の子、らしい…?
すみません、私に女の子らしいを教えて下さい。



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