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アニクダと仮眠室

「……名前、ちゃん……。」
「んー……。」



分かってる、分かってるよ。仮眠室で寝ている部下を襲うなんていけないことだって。いくらここ何日、家に帰ってなくて自分で処理出来ていないからとか、何日も徹夜続きで頭が正常に働いてないからとか、無防備に僕の側で寝てるのがいけないんだとか、全てにおいて、それはただの言い訳でしかない。それなのに後ろ手に鍵閉めちゃう僕なんなの。名前ちゃんの側に行ってちょっとだけ寝顔覗き込んだら、思いの外可愛くてベッドに乗りあげちゃう僕ってなんなの。



「………。」



眠る彼女の目の下には濃い隈が出来ている。僕もそうだけど、彼女もまともに寝ていないことが安易に想像出来る。僕がもっとしっかりしていれば、彼女にここまで負担をかけることもないのかもしれない。するりと彼女の頬に手を伸ばして触れると、心なしか喜んでいるように見えた。
あ、可愛い。もっと、触っても平気、かな。
彼女が寝ているのを良いことに、鼻先がくっつきそうなくらい顔を近付けた。こんなことをしたって、今見ているのは僕だけで、彼女も誰も見ていない。こんなに近寄っても、僕だけなんだ。このままキス、してしてしまおうか。ああ、でも、どうしようかな。迷ったけど、僕だって男だし、好きな子と二人きりになったら、一応そういう気分にもなるし、沢山触れたいと思う。
ごくりと生唾を飲んで、少しだけ緊張しながら頬に触れるだけのキスをする。何度も何度も繰り返せば、それだけじゃあ物足りなくなって、あ、でも、これ以上勝手にするのは



「んっ、クダリ、さん?」
「わあっ!?」



薄っすら目を開けた名前ちゃんが僕を見詰める。わぁ………い、いつから起きてたんだろう…。どうしよう、気持ち悪い、よね、寝込みにこんなことされて……。でも、なんて言い訳したらいいんだろう。ああ、その前に不快にさせた訳だしなんて謝れば……!うわああああ!!!ど、どうしよう僕まだ思いも伝えてないのに!
混乱してあたふたしていると、ぼんやりと寝むそうな表情から一変、するりと僕の首に腕を回してふにゃりと微笑んだ。



「え?あ、あの…」
「夢だよねぇ。クダリさんがこんなことする筈ないもん。」
「うっ…!」



ぐさりと心に突き刺さる一言が。ぼ、僕だって男なんだけど…。若干凹みながらも、名前ちゃん自らぎゅうぎゅう抱き着いてくれるのが嬉しくてなんとも言えない。普段僕に敬語を使う名前ちゃんがタメ口で話している、ということは、まだ起きていない証拠だ。このまま寝かせてもいいけど、僕まで一緒に寝る訳にはいかないし。必死になって悩んでいる僕とは裏腹に楽しそうに笑いながら、首筋に顔を埋めてくる。ああもう!そんな可愛いことしないで!



「クダリさんクダリさん、」
「なんだい?んっ!」



頭を撫でてやって苦笑いで名前ちゃんの呼び掛けに答えてやれば、突然僕の視界は名前ちゃんで一杯。唇に柔らかい感触がしたなって思った時にはもう遅くて、べろっと僕の唇を舐めて、扇情的に笑った。……これは事故で許されることではない気が……。



「えへへー、クダリさん大好き。」



ああ、これが寝言だなんて、寝込みを襲った僕への罰かなにかだろうか!
固まった僕をそのままに、ぎゅうぎゅう抱き着いて、再び寝入ってしまうものだから、彼女が起きるまで僕も一緒に寝てしまおう。起きたら僕だってこの気持ちを伝えなくちゃいけないんだから!



(黒ボス……仮眠室が開かへんのやけど……)
(クダリの為です。我慢なさいまし)



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