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小食なインゴ

「ボス…いい加減にしましょう。体壊します…。」
「平気です。」
「平気じゃないですって!」



時刻はお昼。午前中最後の書類を届ける為にボスであるインゴさんを尋ねた。軽くドアを叩けば直ぐに返事が返って来たので入ってみると、ボスはお食事中だったようだ。しかし、そのお食事には毎度毎度呆れざるを得ない。



「今までもカロリーメトだけで倒れたりしませんでした。今更ですよ。」
「おかしいですよ!まず第一にお腹が空くでしょう!」
「昼くらい抜いても平気です。」



カロリーメイト片手に書類と睨めっこを続けるボスに溜め息が漏れた。片割れのエメットさんはちゃんとした物を食べているのに(でもジャンクフード)どうしてこっちは……。呆れた私を見たボスが眉間に皺を寄せて不満そうにしていたので、逆に小言を言われる前に書類を渡してそそくさと部屋を出た。しかしだ、今日こそはあのような軽食にも満たないお昼を阻止するべく、秘策を用意した。私がボスの為にお弁当を作ってきたのだ。別に、ボスに好意があってエメットさんに「お弁当作ってあげたら?インゴ喜ぶよ!」なんて言われたからじゃない。決して違う。自分のよりも少し大きめのお弁当を持ってドアの前に立った。しかし、立ったまでは良かったのだが、ノックする勇気がでてこない。まずいと言われればショックだし、もしかしたら本当に迷惑かもしれない。いやでも、あれでは本当にいつか倒れてしまうし……。悶々としているうちに勢いよくドアが開いた。



「いだっ!」
「なにをしているのですか。」
「ボスが急にドアを開けるから…!」
「先程から突っ立っているようでしたので、わざわざ来てやったのですが。」



正直なところ、ボスにそんな気遣いが出来たのかと驚いた。こんなこと言ったら殺されるけど。目の前のボスは何か用かと言わんばかりに腕を組んで私の言葉を待っている。私はと言えば、声にならない声を出して言葉を濁すばかり。元より気の短いボスが腹を立てるのも時間の問題。怒られるのは嫌なので、大人しく作ってきたお弁当を差し出した。



「? 何ですか?」
「お弁当、です。」
「はぁ?」
「ボスがいつもあんな物ばっかりだったので、作ったんです。」



ボスに押し付けるようにお弁当を差し出し続けているというのに、ボスは中々受け取ってくれない。私とお弁当を交互に見合わせて、それで?とか言ってくる。察して欲しい。



「ボスに作ってきたんです!しっかり食べて下さいね!」



半ば無理矢理お弁当を渡し、休憩室へ逃げる様に走った。お昼の時間も残り僅かだ。







(名前)
(はい)
(ありがとうございました。美味しかったです)
(!)



ボスの笑顔を見るのは初めてでした。



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