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根は優しいインゴ

ワタクシ、物事にはあまり執着しない方だと自分でも認識しております。それはエメットや部下も認める程なのです。しかし、最近ワタクシの気を引くものがございます。ものではなく、人間なのですが。ワタクシ、それの為に禁煙までしているのです。煙草が苦手と言っていましたので。しかしながら、当のそれは、いつもエメットと楽しそうに話しながら歩いているのです。エメットが笑えばそれも笑う。ワタクシはそれが気に入りません。今日もそれはエメットの隣を楽しそうに笑っております。ワタクシはそれが気になると言うのに、それは



「Hello.名前。」
「ひっ!あ、こ、こんにちは…。」
「もー、インゴってば、名前のこと虐めちゃダメ!」
「……………。」



怯えてまともに話も出来ないのでございます。ワタクシはエメットが言うように虐めているつもりはありません。ニヤついている鬱陶しいエメットには後で関節技を決めようとは思っていますが、表情が硬いため顔に出ているということはないでしょう。それ、改め名前はワタクシが声を掛けると小さなポケモンのように縮こまるのです。ただ縮こまるだけなら愛らしいでしょうが、生憎と名前の場合はワタクシに怯えて縮こまっていますので、素直に愛らしいとは思えないのでございます。



「大丈夫?ほーら、ボクがいるから怖くないよ?」



いつものように、おちゃらけてみせるエメットに名前の表情が少し柔らかくなりました。全く気に入りません。ええ、全く!尚も二人はニコニコと楽しそうに会話を続けるのです。普段から鬱陶しいとは思っていましたが、今日ほどエメットの存在を否定したくなったことなどなかったように思います。そうですね、今日はジャーマンスープレックスをかけてやりますよ。



「インゴさん…?」



エメットへの関節技を考えていましたところ、か細くとても小さな声がワタクシの脳髄に響き渡りました。視線を下げればどこか困ったような名前が恐る恐るといった様子でワタクシを見上げておりました。



「なにか。」
「あ、えっと…エメットさんから禁煙してるって聞いて…。その、宜しければこれを…。」



そういって差し出された物は飴の袋でございました。手渡されたそれを今度はワタクシが恐る恐る受け取ります。嫌われていないにせよ、苦手意識を持たれていると思っていましたから、わざわざ贈り物を下さるなど思いもよらなかったのでございます。暫くそれを見詰めていると、名前が心配そうに嫌いでしたか?と声を掛けてきました。そんなことはないと素直にお礼をすれば、名前はエメットに向けていたその笑顔をワタクシに向けて下さいました。

名前がバトルサブウェイを去り、ぼうっと飴を見詰めてからワタクシは一つコーヒー味の飴を舐めて禁煙に勤しみました。







(インゴの気になるって気持ち、恋っていうんだよ)
(それくらい知っています)
(なんだ、自覚あったんだ)



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