sbms | ナノ
ちょっと嬉しいインゴ

→虫ポケ苦手な夢主ですので要注意



「ボスー、書類です。」



間の抜けた声が聞こえたので渋々顔を上げてやると、そこにはやつれた名前が危なっかしい足取りで書類を抱えてきました。なぜそんなに危なっかしいのかといえば、それは彼女が三徹目に突入しているからでしょう。



「語尾を伸ばすのは止めなさい。腹が立ちます。」
「はーい。ごめんなさーい。」
「語尾じゃなければいいという訳ではありません。」



心なしか目も虚ろで、人の話を聞いているのかどうかさえ怪しい。ワタクシに書類を押し付けた名前はそそくさと部屋を出ようとドアに向かいます。その足取りもやはり来た時と同じように危なっかしく、見ていられません。押し付けられた書類を机に置いて名前を仮眠室に行くよう呼びとめようとしました。しかし、ワタクシが呼びとめる前にピタリと止まった名前が急にぐるりと向きを変え、ワタクシの方に向かって走ってきたかと思えば、後ろに回り、背中からしがみ付くように腕を回してきました。何事でしょう。



「な、なんで!キャタピーがこんな所に!?」
「あぁ、一時保護です。それがなにか?」
「う、動いてる……。うぅ……。」



チラリとキャタピーの様子を窺ってはすぐに顔を引っ込めてワタクシのコートに埋める。ぎゅうぎゅうと締め付ける腕がコートも握り締めるせいで若干皺になってしまいました。ふむ、どうやら名前は虫ポケモンが苦手なようですね。そんな名前のことなど気にも留めず、キャタピーはのっそりと緩慢な動きで部屋中をうろつく。のらりくらりと、ワタクシ達の元へ。



「ぎゃー!こっち来てる!インゴさんインゴさん!キャタピーこっち来てます!どうにかして!モンスターボールに入れて!」
「お前が邪魔で取れません。」
「怖い怖い!インゴさんキャタピーが!キャタピーが!だ、抱っこして下さい!」
「なに馬鹿言ってるんですか。早く離れなさい。」
「無理無理無理!お願いします!」



まったく口うるさいと溜め息を一つ漏らして、腕を無理矢理解いて仕方なしに抱き上げてやりました。足元には不思議そうにそのやり取りを見ているキャタピーがワタクシ達を見上げておりました。抱き上げてやれば、名前は本格的に泣き始めたのかグスグスと鼻を啜る音が聞こえます。



「そんなに嫌ならサッサと机の上にでも登れば良かったでしょう。」
「うっ、ぐすっ、だって、机なんて登ったら、どこから登ってくるか分かんない…うぅ……。」
「見れば一目瞭然ですが。」
「見たくないんです!」



それだけ言うとワタクシの頭を抱え込んで、ぐすぐすと泣きべそをかき始めるので耳元がうるさく、困ったものです。しかしながら、いつものうるささよりも、幾分可愛げがあるので許して差し上げましょう。
震える体を抱きしめて背中をゆっくりとさすってやれば、耳元で聞こえる音が安らかな寝息に変わるのに、そう時間は掛からなかった。



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